アーリー

すずめの戸締まりのアーリーのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.0
2023.5.13

劇場で2回鑑賞。結構なロングラン。売り上げは前作「天気の子」を超えた。

地震を今作のような感じで描いた作品は他にあるんかな。名前の通りミミズのような形をしたエネルギーが扉を通じて出てきて、それが地面に落ちることによって地震となる。凄い面白いし、見た目のインパクトとそれを煽る音楽が不気味で良かった。そして地震といえば避けては通れない東日本大震災。2011年の出来事が2022年の作品で扱われる。最初見た時にハッとさせられた。もう自分の中で、その出来事は遠いものになっていた。忘れてたわけではないけど、地震がテーマの作品やのに東日本大震災を連想しなかった。忘れてはいけない、ずっと自分のどこかで秘めていないといけないなと思わされた。作品としてはちょうどいい塩梅で使われてたと思う。黒く塗りつぶされた日記の日付が3月11日。東日本大震災という言葉がなくても、日本人ならそれで伝わる。それだけで泣き出す人もいた。主人公のすずめはその日お母さんを亡くした。地震とは切っても切れない関係。3月11日みたいに、日本から離れた海底での地震は止められへんのかな。そもそも震源地は扉のある場所になるのか。

新海誠初のロードムービー作品とも言える。九州から北上して行き、最後は岩手まで。色々な県を回るのが新鮮。当時住んでた大阪とか、出身の三重県に来てくれへんかなと期待したけど残念。テレビアニメでもっと細かく出来そうな感じもする。別に県ごとにミミズが絶対出なくてもいいし。

すずめは自分の命を軽く思いすぎている。お母さんが突然いなくなり、人の生き死には運だと言い切ってしまう。そんな彼女が日本中を旅していく中で、色んな人の助けを受け、自分の身を案じてくれてる人がどれだけたくさんいるのかをしっかり理解する。そして過去の自分にそれを伝える。あなたを愛してくれる人がたくさん現れる。だから大丈夫。まだ4歳の頃にお母さんを亡くした。それは1番愛情をくれる人がいなくなったということ。だからある意味お母さんを恨んでしまっていた部分もあるのかもしれん。そしてそれは叔母さんにも。自分を追って東京にまできてくれる叔母さん。確かに過保護でうざく感じるかもしれへんけど、それは愛情以外のなにものでもないと思う。すずめのこれからの人生の中で、周りの愛情に気づけたことが一番の収穫やった。
 また「天気の子」でも描かれた、大切な人か
東京の人々かどちらかを選ばないといけない選択がまた出てくる。今作では東京の人々を選んだすずめ。でもそれで終わらず、そこから大切な人を取り返そうとする。それができる時点で、究極の2択は破綻しているともとれるけど、そうやって行動に移せる強さや諦めない姿勢が良かった。その姿勢を見せれたのは、自分が代わりに要石になるという、自己犠牲ではない自分の身の軽視からくるものやけども。そこからの変化をしっかり描いてくれたから良かった。

今回も音楽はRADが担当。そこに映画音楽作曲家の陣内一真が参加してて、2組の共作という形。だからかジャズっぽい曲があったりして、前二作とは少し音楽の感じが異なる。「東京上空」とかほんまにシーンとマッチしてて、作品を盛り上げる要になってる。

青春感が鳴りをひそめ、少しホラーチックな展開が続く作品。新しい新海誠が見れたのが良かった。話も面白いし泣けるしで、もう次作を期待してしまう。
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