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すずめの戸締まりのマコトのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.9
 「君の名は」「天気の子」に続く本作は典型的なロードムービーです。しかし、ファンタジーとリアリティが見事に調和し、また単純な成長譚や冒険譚とは一味違ったものでした。
 たとえるなら、光沢のあるすべすべとした表面のビターチョコレートのような映画だなと。そして、最近改めて鑑賞し、初鑑賞からずっと感じてきた別の映画への類似を少しずつ形にできてきています。
前作「天気の子」でも同じような気持ちを持ち、何度も見返してみて、共通する要素を感じました。それは、アメリカ・ニューシネマからの影響があるのではないか、と言うことです。
 ネタバレになるので、また下に書きます。



















 前作「天気の子」のクライマックスは、恐らく1967年の「卒業」から影響を受けていると思います。そして、本作は1969年の「イージーライダー」からの影響を感じました。
 「イージーライダー」もロードムービーの傑作なのですが、本作とは違い極めてビターな最後なので、最初は全然違うとおもっていたのですが、改めて見ると、本作のクライマックスは主人公すずめと保護者である叔母の対決、そして和解にあると思います。すずめは東日本大震災で母親を失い、その喪失感をずっと乗り越えられず、12年も過した叔母に対してもどこか居心地が悪そう見えます。
 「イージーライダー」の方も終盤は、主人公キャプテンアメリカが墓石を抱いて亡き母親へすがり泣きます。そして彼の喪失感は、理想のアメリカの喪失へと重ね合わされ、彼は居心地が悪そうです。
 本作では、母親とともに失われたのはすずめの居場所、現実でも東日本大震災で失われた土地と重ねあわされています。
 しかし、本作が「イージーライダー」と違うのは、すずめは叔母と対峙し、互いの心の闇を曝け出し、和解したことにより、新たな居場所を得ました。そして、すずめはいまの自分にとってかけがえのない人を取り戻すことができ、喪失感を乗り越えることができました。

 そんなすずめの物語も素晴らしいのですが、それと同じくらい、本作では災害によって傷つき時には捨てられてしまった土地への真摯なと悼むも感じました。「君の名は」「天気の子」そして本作は災害三部作と言われたりもして、また前作、前々作では災害の描きかたに批判もあったようなんです。しかし本作は、驚くほど東日本大震災を真正面から描き、また災害後の人々の暮らし、そして同じくらい愛おしい災害前の暮らしを描いていました。
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