マグルの血

すずめの戸締まりのマグルの血のレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.6
女子高生と椅子と戸締まり。

レコメンドを受け鑑賞。新海誠作品は「君の名は」のみ鑑賞してます。

地震をメインに取り扱うかなーりセンシティブな作品の印象。震災に対する強いメッセージがあり、東日本大震災も物語のキーポイントとして作用しています。緊急地震速報が演出の一部として多用され、アラートの音声が現実と微妙に違いますが、人によっては震災を想起させると思うので注意が必要かと思います。

本作は日本の神話をベースにしたような設定。廃墟に出現する扉=後ろ戸からミミズと呼ばれる災害の原因が飛び出すから閉じ師と呼ばれる人が扉を閉じなきゃならない。扉を閉じるだけでは完全に災害を防ぐことはできないので、要石というもので東西それぞれ封印されていた。ところが、ある少女がうっかり要石を抜いてしまったことで、厄災の原因である後ろ戸が次々と開いてしまうことになり、閉じ師の青年と少女が日本各地を回って戸締まりをしながら、要石を探しだし封印するための旅に出るというお話。

和風ファンタジーですね。閉じ師の青年は呪いで主人公の少女が大事に持っていた椅子に姿を変えられてしまうのですが、その椅子が縦横無尽に駆け回るという特殊な演出や、作品内のSNSを活用した演出など、重くシリアスになりそうなシナリオにポップな要素を盛り込むことでバランスが取れた内容になっていると感じました。
「君の名は」のときにも感じましたが、物語の中盤にぞわっとくる演出、所謂伏線回収というより重大な設定をぶちこんでくるシナリオは個人的に好きです。そこから終盤にかけて事件解決するまでの盛り上がりにも十分役立っていると思います。
あとは映像美は特筆すべきですね。キラキラした光と強烈なコントラストの色彩表現は評価されるにふさわしいと思います。往年の劇場アニメといえばジブリ作品が王者として君臨し続けているわけですが、新海誠作品はこれからの長編アニメ作品の定番です。もう十分すぎるほど結果出してるんじゃないでしょうか。

ただ、私はファンタジーが苦手なことと、アニメ特有の演出や設定が苦手で、本作もほんのり背中がむずむずするというか、若干中二病的な雰囲気でちょっと心が離れました。手放しで面白いと絶賛できないのは現実的な世界観の中で生きた人間が、突飛なSFやファンタジーの世界に迷いこんでもすぐに順応し、なんなら感情爆発しちゃう感じが苦手だから。こういうの好きな人はたまらないんだろうな。これは好みの問題なのでしょうがない。

とはいえ、つい気になって観ちゃう非常にしっかりした作りの映画です。
娯楽作品として鑑賞するには少し構えなければならない部分もありますが、日本という国で暮らしていく上で付き合い続けなければならない災害について、少しの学びというか心構えというか、何かしらの思考や感情を産むきっかけとなる、道徳的な側面を持ち合わせた作品ではあると思います。

声優陣に関しては…特にないかな。深津絵里とか意外な起用はあるけど、クレジットみないと正直誰だかわかんなかったし、キャラと合ってないとも言いきれないし。

2024年 39本目
マグルの血

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