自家製の餅

すずめの戸締まりの自家製の餅のレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.4
なんだか不思議なファンタジー──と思いながら偶然の出会いから旅をして、日常の自分と向かい合う…テーマがなかなか明らかにならずにサスペンドされつつ、ラストスパートで一気に開くところでRADWIMPSとタイトル。すべてがアヴァン・タイトルであるような新海流。

その不思議な要素は、地震。真摯に3/11に向き合った作品なのだろう。直接的に語られないゆえに重みを感じる。

いわゆるセカイ系である部分に馴染めないところはあるけど、本だらけの部屋や、道中の人々の優しさに助けられるあたりの作風は昔ながらの日本との(今風でない)心地よいズレがある。
他の作品にも共通する神話的な引用がフックになる点など、保守的な思想が伺える。

人が、過去に負ったものを抱えながらも乗り越えていく様。人間を超越した自然や神の世界があり、その中で生きること。今を肯定するためにその過去に向き合い、コンシャスに生きること。喪失の前に受け取ったものがある(受け取ったものがあるから喪失がある)。
未来の子供たちに向けたメッセージと、それをあたたかく見守れという大人へのメッセージ。前向きな意思を感じた。