ウツロ

すずめの戸締まりのウツロのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

新海誠の災害セカイ系ファンタジー(君の名は・天気の子・本作)全部見たけどこれが一番好みだった。前作と前々作に感じていたマイナス要素が減っていたというべきか?
君の名は。から路線はずっとセカイ系ではあるんだけど、本作はかなりミニマルというのか、テキパキシンプルに用事をこなしていくストーリーだったので普通にアニメ映画らしいアニメ映画を観たなという感じになり、普通に満足できた。
助けてくれた同い年の旅館の女の子とか神戸のパブのお姉さんとかが終盤で出てこなかったのがよかった。出てきてたらかなり評価が下がっただろうな。あくまですずめの個人的な物語に終始してくれたから見ていられた。道中はずっと椅子なのにあそこまでの恋愛感情になるんやなぁとは思った。
序盤の「お〜いさっきのイケメンの人〜!…って、これじゃナンパだよ〜💦」みたいな台詞はまぁめちゃくちゃキモかったけど。秋元康か??

大人枠がたまきさんというキャラだったのも良かった。自己犠牲を続けてきた人として描かれていたのでそこの関係性どうなってるんやろ〜と思っていたんだけどうまいこと回収されたなぁ。
サダイジンの登場とともに暴発する形で不満がぶちまけられて、でもファンタジーの力で「確かに言ったけど本人は言ってない」ことになって、後で「そりゃそんな風に思わんこともなかったけど」と本人から語られたことで結果的に真正面からぶつかって昇華できました〜という力技。保護者と子供、しかも血縁関係でもない二人が本音でぶつかるのってかなり難しいと思うんだけど、ファンタジー映画ゆえのリアリティのずらし方をうまく組み込んで処理できててよかった。これ現実ならかなりしんどいだろうな。セリザワも「闇深え〜」しか言えてなかったし…。

セリザワといえばやや強引な懐メロ好き設定に笑った。彼の趣味のせいで映画内にいっぱい曲がかかるので挿入歌担当キャラでもある。というか、ルージュの伝言が流れてやっと気付いたけどこの映画は魔女宅オマージュをやりたいのか!!気付くのが遅いな。

災害をエンタメにすることについては複雑な思いの方もいるだろうけど、少なくとも私は、本作はその辺に対して(ある種の)誠実な向き合い方ができていると言っていいんじゃないかと思った。災害に原因なんて描いてはいけない、という向きもあるだろうけど、災害とか要石とかそういうのも全て含めてすずめの個人的な成長過程の比喩として読むこともできるので、例えばダイジンの「これから人がいっぱい死ぬよ」とかの台詞も決して露悪ではないといえる、と思う。

主題歌ラッドウィンプスなの知らないで見て(前2作がそうだから今作もそうであると予想はできたはずなのだが)、歌が流れてから少し遅れて気付いた。記憶のなかのラッドのvo.はもっと癖の強い歌い方だったけど、この映画の主題歌ではすごくスッキリとした透明感のあるヴォーカルになっていてあれ歌上手いなと思って驚いた。別に上手くないと思っていたわけじゃないんだけど、こういうタイプのシンガーだとは認識していなかった。色々変わるものだな。
ウツロ

ウツロ