あん

すずめの戸締まりのあんのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.0
監督のテーマである決定的喪失を表現する媒体が災害になったのは「君の名は」から、それ以前は主に恋愛を媒体としていた。「君の名は」は恋愛から災害へとモチーフが移る過渡期であった。喪失は突き詰めるといのちとの別れであり、「君の名は」「天気の子」「すずめの戸締まり」などに見られるように彼はこのテーマから動かなくなる。それ以前にも「ほしのこえ」で命の喪失に振り切れた瞬間があり、片鱗はあった。
前回までの作品と比べて変わったのは、喪失の克服に対する姿勢。今までが他者依存や喪失の放棄であったのに対し、今回は未来を生きる自分によって過去の自分の喪失体験が救われるという展開を見せている。

中身で気になるのは震災を人の力で閉じ込めることができるという設定。正直むごいと思った。二人はダイジンを犠牲にして草太の未来を取り返したが、実際に被災し亡くなった方々は何を犠牲に差し出しても戻ってくることはない。見る人を選ぶ作品だと思う。
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