じゅ

クリーン ある殺し屋の献身のじゅのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

カマロの殺し屋、死神ことクリーンさん。
ある少女を救うために裏の組織の連中を全員殺すっていう、全員殺す類いの中でも圧倒的なごもっともさを誇っていた。ボコりたい連中が都合よくバスに乗ってきてくれたからボコったら裏の大物の息子が紛れてたとかいう『Mr.ノーバディ』のハッチ・マンセルさんはぜひ見習ってほしい。(まあ全然違う空気感の話だしどっちも良いんだけど。)

エイドリアン・ブロディはシャマランの名作『The Village』の印象が強烈に残ってる。その影響でどうせ彼に業を背負わせれば良い感じになると思って、「エイドリアン・ブロディ+少女+銃」っていうビジュアルだけ見て行ってみた。文字に起こすと『レオン』みたいだな。あっちジャン・レノだけど。
てか本作では監督業以外だいたい何でもやってたな。すご。


クリーンは、ごみ収集やら空家の落書き消しやら廃品修理に従事しつつ、知人の少女の世話をする男。薬物依存のカウンセリングに通ったり、時折悪夢にうなされたり、何らかの苦しみを抱えて生きている様子。男は、自分が薬物を打つのを幼い娘が真似したことで娘を亡くした過去を持っていた。知人の少女は娘に似ていた。
少女は徐々に悪友との交友を深める。ある日、薬物で酩酊して強姦されそうになったところをクリーンが助ける。助けた際にその場にいた悪漢全員に重傷を負わせ、その中には地域の麻薬ビジネスを束ねる売人の息子が混ざっていた。売人はクリーンに加え、見せしめのため少女と祖母を殺すよう部下を仕向ける。
クリーンの正体はその道では有名な姿を消した殺し屋だった。売人の部下を次々と消し、ついには売人を消すために彼の家に乗り込む。死闘の末、売人の息子が売人を撃ち殺して2人の戦いは幕を閉じる。


「FOR OUR FATHERS」だと。この内容で父に捧ぐとか、どうやら手放しに父という存在を讃えてないな。

あの売人の名前ってマイケルだったっけか?父の名は何シニアだったかな...。マイケルシニアだったような気がするんだよな...。マイケルとしておこう。
で、クリーンとマイケル、同じ父親という立場でありながら何が違ったんだろう。

確かに、肉(チキン)しか食わないか魚しか食わないかとか、薬物で何か失ったか利益を得たかとか、神を信じない(見捨てられた)か信じるかとか、子供がいないかいるかとか、徹底的に対照的なかんじが描かれていた。
けどまあ、これらはあくまで対照的だと強調するための設定ってのが全てかなと感じる。

父親って何なのか。俺には父親は1人しかいないし俺自身父親じゃないからそんなに様々な例を知ってるわけじゃないけど、たぶんマイケル側は「威厳」で、クリーン側は「慈しみ」ってかんじなのかな。威厳っていうか、圧みたいな。
クリーンにとってあの少女が娘相当だったとして、2人の子が悪友(人種が関係あるかは知らん)とつるむようになったとき、クリーンは心配した。一方でマイケルは見下した。我が子に対して、クリーンは同じ目線に立とうとして、マイケルは上に立とうとした。マイケルについては教会の懺悔室で「規範になろうとしている」みたいなことを言っていた辺りも、自分が上で息子が下って感じする。まあ規範ってののなり方によっては素晴らしい父親だったんだろうけど。
マイケルの息子がクリーンにボコられた後のこともだいぶやばかったな。心に刻むためにわざと後遺症を残すような選択をしやがった。クリーンとかあるいは金のある大半の父親だったら「今すぐ手術」を選択してたと思う。

まあ2人どっちにもいわゆる愛ってのはあったのだろう。ただ片方の愛し方はおかしかった。もしかしたらその片方は、息子を経由した自分自身への愛だったのかも。規範になるってつまり、自分自身を再生産するってことじゃないか。


「だめな父親にだめな子供」みたいな冒頭の語りだったか。
薬をやる父親に真似をする子供。裏家業で悪人を従える父親に悪人とつるむ子供。その上の世代には、死を受け入れられない父と子に、理想を押し付ける父と子っていうようなかんじになるか。
まあでもクリーンは悪い父親であったことを痛感して悔い改めてる辺りましなんだろう。

とりあえず俺の父親はよい父親だと信じてる。
じゅ

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