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生きる LIVINGのKKのネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


【映画 試写会】

Filmarks 試写会にて「生きる LIVING」を。

黒澤明「生きる」のリメイク。そしてオマージュ作品と思われる。オリジナルへのリスペクトを感じる良い作品。

オリジナルを観ている人と未見の人とで見え方、感じ方は分かれそう。
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私はオリジナルをみておりますので、、、
同じストーリー、ほぼ同じ展開ですが、違う映画をみているようでした。(実際違うんですけど)

黒澤版「生きる」を継承しつつ、舞台イギリスのカラーにうまく合わせてきてる感じ。上品でマイルドに仕上がっていて、アクの強さは消えハートウォーミングな人間ドラマ感がある。

舞台は日本からイギリスへ変わり、さらにビル•ナイときてるので、そうなるだろうと思ってはいましたが、やはり、無気力で口数少ない(冴えない)中年男性の渡辺が、穏やかで知的な雰囲気の漂うオシャレな老紳士ウィリアムズとなっています(ビル•ナイ素敵です。歌声最高です)。

私が日本人だからかもしれないけれど、「生きる」は、歯車として働くだけの人生の空虚さや、古い官僚体質(評価されない面倒なことは他所へたらい回し、書類の山を築き忙しくみせ、他人の功績に乗っかり少しでも評価を稼ごうとする人たちの集まり)への批判が語らずとも伝わるし、だからこそ、後半、最後の力を振り絞り生きた証を残そうとする志村喬の鬼気迫る演技に引き込まれる。そして、その演出がとても巧みだと思う。通夜のシーンから回想に入り、ブランコ(クライマックス)へと向かっていく展開は、ある意味芸術的で、時代は変われど震えるような感動を覚えるのだけど、これはとても日本的な感覚なのかもしれない。

時間は有限であること、プロジェクトの大小にかかわらず本気で何かを成し遂げようとする人生の豊かさ、そして変わろうとしても人は簡単には変われないこと、それでも意味があること。これらのメッセージは損なわれていない。

本作「生きるLIVING」は、わかるんだけど、感覚的にいま一歩迫ってこなかったな。。。私がオリジナルを意識し過ぎたからだろうけど。

個人的な結論としては、やはり、私にとって「生きる」は、黒澤明×志村喬、で、ビル・ナイは本当に素敵。
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