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生きる LIVINGのsymaxのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.8
"…怒らないでね…あなたに付けたあだ名は…《ゾンビ》…"

いつからだろうか…役所の市民課で課長を勤めるウィリアムズ…毎日山のように寄せられる市民からの嘆願を処理し、たらい回す…それは歯車の一部のように機械的に…淡々と…

"検査結果が出ました…お伝えしにくいのですが…"

医師から伝えられたのは、自らに残された時間が少ない事…自分の人生を見つめ直したウィリアムズは愕然とする…生きながら死んでいた自分に…そう、自分に付けられたあのあだ名のとおりだったのだ…ウィリアムズは自らの人生を輝かせるためにある行動に出る…


黒澤監督作品の中で、私が最も好きなのが"生きる"…

中学生の頃、ビデオに録画し、学校から帰って何度も観ていました。

一日毎に、"生きる"と"マッドマックス2"を交互に鑑賞し、"またそれ観てる"と母親に怒られても呆れられても、めげずに毎日観ていました。

しまいには志村喬のマネまでして…何故、ここまで"生きる"にハマったのか…今となってはその理由はハッキリしないのですが、そんな大好きな作品がリメイクされたのですからコレは外せません…しかも、ビル・ナイだし、カズオ・イシグロですから…

構成はオリジナルとほぼ同じなのではないでしょうか?

ビル・ナイの抑えた演技は、志村喬とはまた違ったアプローチですが、素晴らしい演技です。

ウィリアムズが世に残した物は、ほんの小さな事で、しかもその功績は横取りされ、人々からすぐに忘れ去られてしまうのかも知れません。

人生の終わりを知るなかで、いつの間にか無意味で空虚な時間を過ごしていた事に気付かされたウィリアムズは、短いながらも残された時間で"生きる"のです。

ウィリアムズにとって、"人からどう思われるか"は、眼中に無かったのかもしれません。
"自分がどうすべきか"が問題だったのではないでしょうか?

ウィリアムズの部下であるピーターが、ウィリアムズの想いを知ったラストの笑顔が何とも爽やかで…良い作品でした…
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