よしまる

生きる LIVINGのよしまるのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.7
あまりにも完成された世界観を持つ名作をリメイクするというのはほんとにハードルの高い作業、しかも異国の場合は言葉も違えば文化も価値観も変わる、大丈夫なのか?と思いながら劇場へ。

カズオ・イシグロ氏の脚本は、さすがの解像度!まだ戦後の薫りの残る日本独特の泥臭い世相をうまく中和させ、英国紳士のジェントルな色に染め上げる。これは日本人にも英国人にも出来ない芸当なのかもしれない。すんません、イメージだけで言ってるけど笑笑

物語が優れていることは今さら言うまでもなくあらすじは割愛するけれど、生きる意味を失い、そしてまた希望を見出す展開はお国が変わってもやはり胸を打つ。

オリジナルではお葬式での噂話や寄り合いの薄ら寒さも特徴的、しかしその点も異なるアプローチでジェントルに描かれていて(好き嫌いはともかく)、残された者たちが偉そうなことをほざいておきながらすぐに元通りになっているところは逆にイギリスらしい感じがしておもしろかった。

個人的な好みとしては、ビルナイの佇まいがあまりにカッコ良すぎるがために、うだつのあがらない中間管理職のダサいおっさん然とした志村喬の味わい深さがずいぶんとスッキリとしてしまい少々物足りない。ただ、今では考えられない風景だけれど、書類の山があるのは世界共通だったのだな(とは言えやはり日本の役所よりはスッキリ片付いて見えた💦)

あと部下のピーターのロマンス、あれ要る??
一緒に劇場で鑑賞した友人@larabeeさんは、これも故人がなし得なかった夢をしっかりと受け継いだ証だ!と穿ったことを言っていたけれど笑笑
いくら若い娘に目覚めたとはいえ、そこは継がんでええやろと😆

音楽も素晴らしく、映像も含めスタイリッシュに美しく仕上げられただけに、そうしたサブキャラの余分な要素が逆に目立ってしまい、深い感動に邪魔が入ったのが減点要素。息子さんのくだりもやや消化不良気味に感じた。全般に、もう少し人間味があったほうがボクは好みかな。
よしまる2023年洋画ランキング14位でした。