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生きる LIVINGのGTのネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

 黒澤明普及の名作である「生きる」のリメイク。舞台を戦後のロンドンに移し、余命幾許もない市役所の課長が真に「生きる」ことを探し求める。
 原作視聴済、さらにその映画で死ぬほど感動した身としては、どのようにリメイクをしてくれるのか楽しみだったのだが、この作品は原作へのリスペクトに溢れた傑作だ。基本的に原作に忠実ながら、原作に足りないところを補うようなシーンもあり、個人的には大満足だった。舞台がイギリスということもあり、古い日本を舞台とした原作と比べると上品でかつ静謐な雰囲気が漂っている。原作の志村喬はおどおどとしてコミュ障感があったが、今回の主人公であるウィリアムは紳士然として割と堂々とした印象。不器用ながら必死に頑張る感のある原作と比べると泥臭さはなく、それが故全体的にスタイリッシュでおしゃれな印象。これは英国という国柄故か。
 主人公に真に「生きる」ことを決意させるヒロインとの交流は、原作だと随分と淡白で、しかもその後そのヒロインは登場しなくなるというなんともあっけないものだったが、今作ではウィリアムは、彼女に本音をぶつけ、さらに「あなたに憧れていた」とまで言わせる。原作では主人公を邪魔者扱いしかしなかった息子だったが、本作ではヒロインと彼の葬式の時にやりとりをし、原作で感じた飽き足りなさが、結構薄まっていたように感じる。勿論、あの有名なブランコのシーンも登場。最後の最後でそれを持ってくる演出がニクい。とにかく、これ以上無いほどの素晴らしいリメイクといえるのではないか。原作を見たのが随分前だし、もっかい見たいなと思った。
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