よふかし

生きる LIVINGのよふかしのネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

黒澤明の方を寡聞にして知らないけど、めちゃくちゃ良かった!音楽も映像も良くて、特にセリフが説明的でないのが最高だった。昨今は全部喋る作品が多いけど、この作品は語らずの美学があり、視聴者に委ねてくれる。

余命宣告された仕事一筋の偏屈なウィリアム。死を前にして羽目を外そうと無断欠勤して馬鹿騒ぎをしてみるも、なんだか腑に落ちない。結局職場に戻って、普段なら歯牙にかけない公園作りという小さな地域の仕事を全うする。
息子が結構冷たくて、ウィリアムは打ち明けられないまま雪の日に一人寂しく死んでしまうんだけど、不思議と満足気なんだよね。誰に看取られたわけでもないのに、なぜか?
それは、彼には自分以外の誰かのために働いたという自負があったから。公園は、大仕事ではないし、作られた当初は感謝されても、いずれ廃れるものだろう。だとしても、仕事を為したという小さな満足感が彼の心を幸福にさせた。
あふれんばかりの輝かしい幸福ではないけど、暗い夜にたったひとつきらめく星のような幸福が、人生に価値を与えてくれる。ブランコを一人漕ぐシーンが素敵だった。

丁寧でささやかで、ごまかしがない。心に沁み渡る良い映画やった😌✨
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