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生きる LIVINGのkounaienのネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

意外にもシンプルなストーリーで後半驚きながら観た。

ウィリアムズ氏がガンであることをなかなか言い出せないし言わないまま死亡する、それを納得させる生前のもどかしい言動の演技が印象に残った。
たとえばロンドンの役所を辞めたマーガレットに対してさえも散々連れ回した後にやっと持病を伝えるところなどがそれにあたる。

あとウィリアムズ氏の葬儀の後の公務員の面々の誓いが早々となあなあになっているシーン、あの部分に生きる中で登場人物が良くない方の秩序に飲まれるシーンだと理解しており、同じ日に観た別の映画でもそのようなシーンがあり自分の中で処理ができなかった。

受け入れてしまった整合性のなさはどうすべきかは、この映画では、違いの見本となった行いをした故人の志が故人そのものに生きることを楽しませていたと示し、この映画におけるストーリーの観測者であるピーターを通じて人の一生が残すものはどこかにあるという救いを作っていたように思う。
その都合の良い展開をできるのが創作物の良さであり、都合は良くない現実において救いはあるという予感を与える。
それは分かるがこの一連の映画内のイベントを演技や演出抜きで文字で知らされたら都合の良さに怒りに震えるかもしれない。
つまり都合の良い展開をやるという賭けができるほど演出や演者が良かったという言い方もできるかもしれない。

そういえばピーター役のアレックス・シャープは大好きな『パーティで女の子に話しかけるには』のメインキャラクターでもあった…
彼の演技をまた観られたのもうれしかった。

あとこの映画全体の特徴として声をかなりはっきり録っているようで、セリフを聴くこと自体が楽しい。その部分だけでも見る価値がある映画だ。
個人的には子どもの遊び場を作ってほしいと嘆願書を持ち込んでくる女性達(ご婦人方と呼ばれる)が新人公務員のピーターに逆に役所の道案内をするシーン、遊び場になる土地を視察に来たウィリアムズ達にドキドキした顔で同行するご婦人方なども見ていて楽しかった。
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