通りすがりのアランスミシー

生きる LIVINGの通りすがりのアランスミシーのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.3
クロサワの不朽の名作『生きる』の何と海外版リメイク。
年代はオリジナルと同じ1950年代だが、舞台はイギリスに置き換えられそれに伴い人物設定も大きく変更されている。
展開は原作に忠実だが、全く異なる文化圏を舞台にしているためただのコピーでなく、確たる個性を持った別物に変わっている。
それでいて、芯の部分には確かに共通するものがある。
イギリスは日本と全く異なる文化圏だが、「はっきりものを言わず、婉曲的な表現を好む」という点で国民性が似通っている。
全く異なる文化圏でありながら共通点がある絶妙な差異と共通点があるからこそ成り立った企画だろう。
山田太一原作の『異人たち』もイギリスでリメイクされてかなり評判になった。やはりどこかしら国民性的にシンパシーを感じる部分があるのだろう。
2020年代の映画なのに、画面は4:3でシーンの切り替えにワイプを使っているところが完全に原作オマージュ。
脚本はノーベル賞作家で日本生まれの日系イギリス人のカズオ・イシグロなのが嬉しい。
驚きはないがとても良いリメイク企画。