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生きる LIVINGのrage30のレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
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『生きる』のリメイク作品。

舞台が日本からイギリスに変わる事で、日本的な事なかれ主義が伝わるのか不安だったのですが、イギリスの役所も似た様な感じで一安心。
欧米はもっと合理的なイメージがあったんですけど、まぁ役所の人間なんてものは、どこも似た様なものなのかもしれませんね。

仕事机に書類の山が出来てるのは、原作へのオマージュが感じられて嬉しいところでしたし、物語も基本的には原作遵守で、黒澤版が好きな人でも違和感なく見れる事でしょう。

既に黒澤版を見てる身としては、物語における驚きや発見は特になかったのですが、その分、途中から回想で語られていく構成の特異さに目が行きました。
終盤を残された職員達の目線で語る事で、この話を決して美談で終わらせない…現実社会を冷徹に見つめる厳しさには、改めて背筋を正される思いになります。

さて、物語が同じ以上、今回のイギリス版と日本版の違いは何か?と問われると、主演俳優の違いが一番大きいのかなと。
人間臭くて泥臭い志村喬と、クールで紳士なビル・ナイ。
特に日本版は過剰な黒澤演出も相まって、2時間越えの作品になっているのに対し、イギリス版は余計な描写をカットして、100分に収めているのも両者の違いとなる部分。

どちらが良いかは好みの差だと思いますが、個人的には日本版の方が好きかな。
やっぱり、どう考えても自分はビル・ナイにはなれないしw、人間ドラマの描写が濃い分、日本版の方がより感情移入して見れた気がします。

ただ、若い子が2時間越えのモノクロ映画を見るのはハードルが高いのも分かりますし、変にクドくなく、あっさり見終えられるイギリス版の方が見易い事も確かでしょう。
『生きる』を未見の方は、まずイギリス版から入ってみて、興味があれば、日本版も見て欲しいなと思います。
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