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東京2020オリンピック SIDE:AのABBAッキオのレビュー・感想・評価

東京2020オリンピック SIDE:A(2022年製作の映画)
2.2
 2022年河瀬直美監督。IOC公認の東京五輪公式記録映画で、2部構成の第1部。この奇妙なイベントの奇妙さの記録としてはふさわしいような映画。コロナで1年延期されたにもかかわらず、なぜか東京2020という名称にこだわっているところからして幻影的なイベントだったが、映画の冒頭にうら悲しい君が代が流れ、「中止だ中止」といったプラカードが一瞬映った後、森組織委会長たち、到着した聖火を扱うレスリングの吉田選手の後ろには恐らく復興五輪ということでサンドイッチマンの姿。
 奇妙さを挙げていくと切りがないが、開会式では唯一の見せ場だったドローン地球が競技場外の反対派やコロナと戦う病院の映像に挟み込まれ、バッハ会長、天皇陛下の挨拶と大坂なおみの聖火点火、いきなり64年五輪でヘーシンクに日本柔道が敗れた映像と山下JOC会長のコメント。この調子では同時代の人間はともかく、後世の人間は何を描いているのか判らなくなるのでは。
 SideAは選手中心ということだが、競技は女子バスケ、ソフト、柔道などある程度カバーされているものの、選手のがんばりと勝利至上主義への批判双方に配慮し、また選手の日常にも目配りするということなのだろうが、正直記録映像の継ぎ接ぎとしか見えない。
 五輪記録映画は周知のようにナチス大会でリーフェンタールの映画がモデルを確立し、64年東京の市川崑もそれをモデルとした。今から見れば脚色の過ぎる作品だがメッセージ性は見えた。本作は五輪がいかに空疎となったかを映し出した映画として残るのではないか。
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