かのん

UNFRAMED/アンフレームドのかのんのレビュー・感想・評価

UNFRAMED/アンフレームド(2021年製作の映画)
3.1
4人の人気俳優達がそれぞれ監督・脚本を務めるWATCHAのオリジナルショートフィルムプロジェクト。個人的には①④が好きだった。

①学級委員長選挙 / パクジョンミン
舞台はある小学校の学級委員長選挙。内気でいじめられっ子のイノ(キムダムホ)は、クラスはリーダー格の男女2派閥に分かれている中で学級委員長に立候補させられてしまう。果たして、学級委員長に選ばれるのは誰なのか。

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「BLEAK NIGHT 番人」や「空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜」でファンになったパクジョンミン。設定が小学校の選挙という変わった切り口。幼い頃に学級委員選挙で恐怖を感じたことがあるが、大人になってテレビを観ていたら「大人の選挙も変わらないな」と思って本作を撮ったとか。

大人が出てこない分、子ども達だけの小さくて狭い世界での出来事ということが際立たされる。イノはなぜ立候補したのか、誰が立候補させたのか。子ども達の世界での小さな派閥争いや人間関係での選択に苦さが残る。しがらみに縛られまくりな大人の世界を、まだ味あわないでほしいと思ってしまう。24分という短い時間で展開作られていて面白かった。

②再放送 / ソンソック
売れない役者のスイン(イムソンジェ)と叔母は、親族の結婚の顔合わせに向かう。正直じゃない叔母と、見栄を張って嘘つく甥は、喧嘩しながらも会場へと向かっていくのだが…

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本当の叔母と甥に見えるほどリアルな態度や言葉遣い。大好きな瓜を「まずくて高いものを持ってきて…」と悪態つきながら食べる叔母。オーディションも受かっていないのに「断るかも」と見栄を張る甥。そんな中でも、お互いを気遣い合うその関係性にほっこりとする。

③バンディ ー 蛍の娘 / チェヒソ
9歳の少女バンディ(パクソイ)は小学生になってから発症した吃音症を友達からからかわれていた。母のソヨン(チェヒソ)は、心理的な要因があるのではないかと思い、今まで隠していたある事実を伝えようとする…

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1番映像が綺麗。緑に囲まれた裏山で蛍を探そうとするバンディ。父との思い出を胸に抱くバンディに、今まで秘密にしてきた父親に関する秘密を打ち明けるソヨン。悲しさを乗り越え、2人で生きていく様が良い。

④ブルーハピネス / イジェフン
チャニョンは夢だったカメラマンを諦め、バイトと就活に明け暮れながら同棲中の恋人との幸せな将来を夢見ている。ある日、偶然再会した高校の同級生から「ある情報」を聞いたチャニョンは…

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20〜30代に起こりうる風景を切り取っていて、1番共感性が高い作品だった。チャニョンはお金持ちの息子を塾まで送り届けるバイトをしているが、その男の子がタンジュンサン。「ムーブ・トゥ・ヘブン」キッカケでキャスティングしたのかな?違う役柄が観られて嬉しい。小言でチャニョンをグサグサと刺している子だけど。

高校の同級生だった投資家のスンミン(イドンフィ)に再会し、株式投資について教えてもらうチャニョン。言われた通りに株式を購入したところ、はじめは少しだけ投資したら利益が出たために欲を出してしまう。

スンミンが一見悪徳商法しそうに見えてしまうので、全然信用できぬまま観進めてしまったけど、自分には自分には一切見返りがないのに助言して連絡もくれているスンミンに対し、チャニョンは何も与えることもせず文句しか言わない。

彼女との幸せな未来を思い描いているはずが、彼女の気持ちそっちのけになってしまう変化感が辛い。彼女、美人な上に相手の機嫌を損ねることなく受け入れてくれる、とっても良い彼女なのに。彼女が可哀想だしチャニョンにはもったいない。

ラスト、どっちにも転がりそうな形で終わらせていて想像が膨らむ。とても良い。「再放送」でも本作でも就職が厳しいという描写があって、韓国の就職の厳しさを改めて痛感した。
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