ちお

DEATH DAYSのちおのネタバレレビュー・内容・結末

DEATH DAYS(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

生きることは、死ぬまでの日々。
生きている人間のアイデンティティの虚ろいや窮屈さが生と死の間に逆転してうごめく。

こんなに憂鬱なシーンが込められているのに、「なんで生きるのか?うーん、考えるのやーめた!」って気持ちにさせてくれる、今見て良かった映画でした。

それは、脳死ではなくて、絶対みんなの頭に残った「ほぐし水」!
「人間は複雑すぎるから、役割が明確なほぐし水がいい」
生まれ変わったら何になりたいかって友達同士で駄弁るシーンでのセリフです。

「DEATH DAYS」というタイトル、鬱屈とした役者イメージの森田剛主演とのことから、内部グロテスクな憂鬱映画をイメージして見に行きました。
実際そういう雰囲気も感情もあるのですが、なぜか鑑賞後、爽やかな気持ちが強かった。


この映画は、一瞬ほぐしてから考えさせてもくれる。
色々な事が世界で起こっているから、綺麗事で目を逸らさせるのではなく、根本は映し出されているのだけど、それでも肩の力を抜いて1回前を向いてから考えていいと言ってくれてるような、本当にほぐし水みたいな映画でした。


それから、映像のジワジワと背中から這い寄ってくる静寂の恐怖、計算されて描かれすぎたことを計算しているような爆発的なハッピーなシーン、MVや写真の個展のようなゆるやかな日常、全ての緩急が、短編との相性も良く、見ていて気持ちよかったです。

最後のシーンも特に衝撃でした。
物語のなか、ひとつのスタジオのなか、「デスデイズ」の日に部屋のなかから、迷った先飛び出た主役の森田剛が、私が見た「シネクイント」の劇場から出てきたのです。
この劇場から出たら、私たちも生きていくんだなーっていうワハハって爽やかな気持ちになってしまった。


本編上映後に「生まれゆく日々」という、この映画を作成する約4日間のドキュメンタリーテイストもありました。
最初は、本編だけを咀嚼したまま帰りたいような気持ちもあるな、と思ったのですが、この映画の「それでも生きていく」という感覚を、グワッと押し込んでくれる素敵な映像でした。
それから、この本編の計算された美がどのように作られているのかも見れて面白かったです。
ほぼ全てのシーンがひとつの小さなスタジオで撮影が行われているのも、どのようなこだわりがあって作られたのかも垣間見ることが出来て、それらは、生きることは生きているだけで自分を創作している、意味は無いかもしれないけど、っていうような気持ちにもさせてくれました。


死んでない〜♪の歌のシーンや、結婚式から帰ってきて踊るシーンはヒヤッとしたけれど、ちょうど良いところでカットしてくれる、やっぱり緩急が美しい映画だと思いました。
ちお

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