みむさん

ミュンヘン:戦火燃ゆる前にのみむさんのレビュー・感想・評価

4.0
とても見ごたえあり。脚色度合いはさておき、歴史物としても、スパイドラマに近いエンタメとしてもよかった。これも配信前に劇場公開してほしかったが2021年末~2022年初頭はまだ微妙な時期だったかな。 

第二次大戦前に行われたミュンヘン会談の裏に何があったかを描いたロバート・ハリスの同名小説(未翻訳)の映画化。

かつての友人三人が政治的思想の違いで仲違いして以降疎遠になり、欧州の緊張がさらに高まっている時に思わぬ形で再会することとなる。
このうち二人がミュンヘン会談の裏で奔走していたという話なんだけど、これが異様な緊張感のおかげで映画的にものすごく面白い。

ドイツの反体制派はイギリスと組んでヒトラーの暴走を止められるか、ヒトラーの姑息な手段や嘘を知る側と国外からの視点しかなく知らない側の思考の違い、差し迫るタイムリミット、不気味に監視するナチス高官。

ヒトラーの表情が一番怖く見えた映画でもあった。他の映画ではヒトラーの残虐行為や死に際、青年期などは観たが、まさにトップに立ってからの部下や補佐役をしずかに睨み声を荒立てずに淡々と座った目で問い詰める姿、普通の業務中の姿が怖すぎた。具体的にはポールが依頼された海外紙の要約をヒトラーに渡すときの一連のシーンやディナーの場での「自分がわたしより賢いと思っているのか」と問い詰めるシーンが一番怖かった。蛇に睨まれた蛙ってこういう状態だね。

この物語がどういう結末を迎えるかは歴史がすでに語っているので分かっているが、それでもヒヤヒヤハラハラが止まらない。

どうか間に合って、考えを変えてくれと願ってしまう。でもヒトラーはそんな奴じゃないし、その後の出来事に凹む。やっぱりそうだよねと。

ジョージ・マッケイ主演、ジェレミー・アイアンズ共演、サンドラ・ヒュラーやアウグスト・ディールなどドイツの人気実力兼ね備える名優も出ている。

ジョージ・マッケイは最近良い映画で良い役が立て続けにあって、選球眼の良さに感心する。彼本人によるものか、エージェントの功績かは知らないけど。
間違ってマーベルとかに出ないようにと願うばかり。