みりお

白獣のみりおのレビュー・感想・評価

白獣(2021年製作の映画)
4.2
北海道出身の高橋佑輔監督の自主制作作品。
長きに渡る寒波で深刻な食糧難に陥り、争いを始めた【ファリ】と【ネスタリコ】という2つの村の対立を描く作品。
戦だけでなく流行病により2つの村は疲弊し、人々は"山の向こう"の新天地を目指す。
山を越えれば、そこは緑豊かな地が広がっているのだと夢見て進む人々。
しかしその地には、山を越えようとする者は"白獣"という魔物の餌食になり、山を無事に超えた者はいないという伝説があり、彼らの希望を打ち砕いていく。

雪深い山道と、先の見えない吹雪。
戦の終わりを知らず、互いを憎み合う2つの村の人々。
この山を越えたところで、果たして本当に幸せは掴めるのか。
この山を越えたところで、本当に明日は来るのか。
不安に駆られて希望を打ち砕かれそうになりつつも、極限の状態に置かれても、明日を掴もうとする人の強さや、山頂を見つめる鋭い眼光に惹きつけられる作品でした✨

真冬の北海道のマイナス20℃の凍てつく大地で撮影されたそうで、キャストさん・クルーさんは「こんな辛いことをするために映画の世界を目指したんじゃない」と何度も思ったそうです😂
ただ、その甲斐があったと視聴者に納得させるほどの、現代とは思えない美しい風景に息を呑みました。
「映画館のスクリーンで絶対に観たい」と思わせるような壮大な景色に一瞬で引き込まれ、私もファリの一員として、山の向こうを目指そうとしていました。

あと自主制作と思えないほど明瞭な台詞と、そして効果音が素晴らしく、ほぼ全編にわたって聴こえてくる雪を踏む音が、明瞭かつリアル。
吹雪の中でのシーンもあり、録音の方は相当苦労されたんじゃないかと思います。
音声さんに改めて拍手を送りたい作品でした。

一点だけ残念だったとすれば、作品に出てくる男性たちは、髪もボサボサ、髭もボーボーで、戦の最中食べるものもない生活にとても忠実なのですが、女性陣がメイクばっちりなのが、とても違和感だったかな🥺


【ストーリー】

かつて、その大地には険しい山々に囲まれたファリとネスタリコという2つの村があった。
長きにわたる寒波により、深刻な食糧難に陥った2つの村は争いを始めるが、やがて謎の熱病が大地に蔓延し、戦は膠着状態を極めた。
そこでファリの人々は新天地を目指し、山を越えようと試みる。
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