たけひろ

エンパイア・オブ・ライトのたけひろのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
5.0
繊細で、美しく、温かな光。

映画館の暗闇の中。

映写室から眩い光が照射されることにより、1秒間に24コマの写真が連続して、スクリーンに映し出される。

そのコマとコマの間には、人間の視神経では認知のできない闇がある。

確かに「ある」のだけれど、認知のできない闇。

つらい現実、いたたまれない状況、差別的な社会を生きてゆく中では、認知せずにはいられない痛みがある。

その痛みをまったく脳が、心が認知せずに生きてゆけたなら、どれほど楽だろう。

中には痛みの全てを認知し、傷ついてしまう者もいる。

他人の痛みに驚くほど無関心な者もいる。

いじめ、ハラスメント、差別、戦争、全て、痛みへの想像力の欠如が根本的な原因だと思う。

闇の数も、痛みの感じ方も、その限界も、人それぞれだ。

ただ、大切な誰かの闇や痛みを想像し、寄り添うことは、きっとできる。

木洩れ陽のような温かさが沁みて、ラストシーンでは目頭が熱くなりました。

あの人は、私の人生を照らした光だった。

そんな出会いは素敵だよなあ。

海辺の映画館、撮影、劇伴、選曲、引用の詩が、とっても好みだった。

なんとなく、「バビロン」のデイミアン・チャゼルの感想が知りたいです。
たけひろ

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