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エンパイア・オブ・ライトのIDEAコメント休止中のレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
3.8
エンパイア劇場を舞台に描かれる人間模様は、苦しくて逃げ出したくて、でもやっぱり暖かい。
なぜこんなに苦しいのだろう。
傷つけようとしてくる人のせい?
今の私を形作った環境のせい?
違う。私が心に蓋をしているからだ。
本当は誰かに知って欲しいんだ。
ありのままの私を。


名優オリヴィア・コールマンと新鋭マイケル・ウォードのアンサンブルに、英国のベテラン俳優が脇を固める。観客の感情を振るわせる心と心のぶつかり合いがここにある。
その場の匂いを感じられそうな美しい映像は名撮影監督ロジャー・ディーキンスによる。『ブレードランナー2049』『1917』でアカデミー撮影賞を獲得した彼が撮る映画館は一層魅力的である。

序盤、話の入りからしばらくは合わぬ作品を引いてしまったかとモヤモヤ…が中盤から終盤にかけての盛り立て方が素晴らしい!
映写技師の生きざまにもフォーカスした今作は映画愛、いや映画館愛に満ち溢れた、人々の心のあり方の物語ではないだろうか。

パンフレットはムービーウォーカーさんによるいつものサーチライトピクチャーズシリーズで読み応えあり。
エンパイア劇場と新年を祝う花火がマッチした美しい表紙が目を惹く、おすすめの一冊。


座席に腰掛け、ふぅと息を吐く。
そうして落ち着けたはずの心が騒ぎだし、
大きなスクリーンに映る幻影を追いかける。

今この瞬間、観客は、私たちは平等だ。
年齢も性別も、肌の色も関係ない。
誰もそんなこと気にしない。

"人生とは心のあり方"
何も入っていないと思っていた
私の心の器から溢れ出す感情。

ロビーを出て、すぅっと息を吸う。
新鮮な空気が肺を満たした時、
私の中で何かが変わった気がする。
新しい人生に踏み出すための何かが。