Ginny

エンパイア・オブ・ライトのGinnyのネタバレレビュー・内容・結末

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

若い頃は映画館でポップコーンを食べるくらいならもう一回映画が見たいし鑑賞中に一切の音を立てるなという勢いでしたが最近はポップコーンのしかも塩とキャラメルの2種のキングサイズをばりばり食べながら見る。
予告編からバクバク食べてるんですが、ポップコーンを掴むその手が止まった。エンパイア・ザ・ライトの予告を初めて見た時。
あまりの映像の美しさに。

私の大の好みの左右対称の美しい構図。
これを見た時から絶対この映画を映画館で観ると決めました。

その映像美は始まりから堪能できます。
切り取り方、構図の捉え方が美しいだけでなく今作のタイトルにあるように「光」の映し方が抜群に冴えています。
オープニングからスイッチオンの光る瞬間が効果的に映され、全編を通して光の射し方が雄弁に語られるように映されています。

ただ、美しい映像しか期待していなかったので前半は嫌な気持ちになることが多く結構ハートを痛めました。
好きな俳優のこんな演技(演技と分かっててもつら…)とか、「誰が傷つく?」って台詞とか、オリヴィアコールマンの取り乱す演技は『女王陛下のお気に入り』でもうお腹いっぱいだから見たくないなとか、そして悲しい差別とか。

でも、その後の展開で感想がガラリと変わりました。
ヒラリーが病院からタクシーに乗り映画館へ行った時どうするのか予測できませんでした。そこで聞いた「映画を見せて」という言葉にぼたぼた涙が出てきました。
自分の意思。それを口に出せた。
何かの拒否なら思い切ってそれまでも行動していたけれど、こうしたいという自分の意思に耳を傾けてそれを自分の口から出した、ヒラリーが。
自分の過去を思い出し、これはエンパワメントの映画なのでは、と思い涙ぼたぼた。

自分を見失い他人の意見ばかり伺い苦しかった時期を超えて、自分の好きな服を着て出かけた時の喜びといったら。本当に楽しくて嬉しくて、それ以来逆に反動で人の言うこと聞けなくなっちゃいましたが🤪

抑圧されてしまう立場の人(女性、有色人種)で、苦しみながらも耐えている人にこの映画が届いて希望を持って前を向く一押しになればいいなと思いました。
先日ルピ・クーアの『ミルクとはちみつ』を読んで、女性の苦しみ、絶望、体と心への傷、救済、癒し、希望を文字で体感しました。
経験したことだから、わかる。
絶望も希望も。同じ苦しみを若い子に味わって欲しくないし、もし今その穴に落ちてるなら早く気付いて這い上がって欲しいし、もし傷ついてしまったとしても大丈夫、自分の力で立ち直れるよ、と励ましたい。

死んだら、みんなが悲しむのが段々不思議になってきて。
みんなが思う持つべきものを私が持ってないからと言って私を憐れまないで。私は自分が持ちたいものはもう持ってるの。私はとても幸せだから、私が死んでも悲観しないで、とても幸せだったということを知って欲しいと思う最近です。

ヒラリーとスティーヴンの仲が深まる様子を見て初めて腑に落ちた。こうして年上女性と年下男性の恋愛は起きるのか、と。
何かが足りなくエネルギーを持て余した若い男性が、人生経験が年齢が上な分豊富で落ち着いた年上の女性に同年代の女性にはない魅力を感じて関係が深まる。
でもそれって一時的なことだよな、と見ていて普通に思ったけれど、それでいいのではとも思う。
当人、特に女性側からしたら苦しみもあるけれど、一時でも他人に影響を与えてその人の人生や人格を変えるくらいの出会いと共に過ごすことができたら幸福ではないか?
適齢期、性別だけで役割を見て心が通わない関係より。

未来がある若者なら、映画館から巣立った怪我を治した鳩の様に飛び立つ時が来る。
その時まで、あたためてくれるのが彼の場合ヒラリーだったのかなと思った。
必要な出会いと時間だったと思う。

ネガティブパワーのある人が1人いなくなるだけでこんなにその場の雰囲気が良くなるのかと、エリスがいなくなった映画館を見て思う。
スティーヴン以外の映画館の従業員が、ヒラリーに関して踏み込みすぎないところが好感持てました。
一見冷たいなんて思われるかもしれないけれど、精神が不安定な人を支えようと介入しすぎてしまうと介入した人が柱になってしまって寄りかからないと立てない様になってしまう気がするから、不用意に入れ込みすぎない方が良いのではと。

首を突っ込みすぎないところが良かったです。
でも、見守って声をかけてはくれる。

後半の優しさに救われました。

映画館で見ると周りの観客は選べないので、たまに気が散る場合も。
先日『イニシェリン島の精霊』を見た時、両隣の方からの音が気になりました。右の人はお腹鳴りまくり。音鳴らすくらいならご飯食ってこい!左の人は口呼吸かな。
でも生理的なことは仕方ないし、映画に集中すればいいんだよな、と思ってイニシェリン島の方は映画に没入できて良かったですが、今回は左にしか人いなかったんですがその人が口呼吸うるさい…でもそれは仕方ないから、と思ってたら携帯通知音3回鳴らしたんで許しません!携帯は違う、電源オフできるんだから🤬🤬
私は悪魔の実を食べるなら「ナギナギの実」一択です。
というわけで、通知音という人の体から出ない異音のせいなのか没入しきれなかったのが残念でした…。
仕方ないんだけどね。みんなで集まって見るしか大スクリーンで映画は見れないから、いろんな人がいるのは仕方ないから…。

マイケルウォードの目がいい。
ムードがある、魅力的。
大学のある街に出発する前にヒラリーと最後に会った時見ていて気付いた大好きなあの子の目に似てる。
とにかく優しくてあたたかくて年下なのに人生何回目?と思ってしまうくらい人ができていて可愛い可愛いあの子。恋をしてしまう瞳をしているあの子。
マイケルウォード、売り出し方を間違えなければかなりいいとこに行ける人材だなと思いました。
Ginny

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