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エンパイア・オブ・ライトのparkoldiesのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
3.6
正直あまりパッとはしなかったけど、ヒラリーが映画館に入って『チャンス』を観るシーンだけで星4.5はあげたい映画。

おそらくヒラリーは心の病はあったにしても映画好きであったから映画館に勤めたはず。昔は勤務中に映画も観たのだろう。ただ支配人に体を捧げて愛のないセックスをするうちにそんな気も削げてしまった。

『エンパイア・オブ・ライト』タイトルが示す通り、この映画は"エンパイア劇場"に光を灯すところから始まる。しかし、ヒラリーが映るショットにはどこか影がある。光は強調されているはずなのに、その光はヒラリーとは切り離されているかのように。映写技師のノーマンが言うように、映画は光。光=映画から離れて生きてきたヒラリーに、スティーブンによって光が灯される。光が何重にもなってヒラリーという女性の人生を輝かせると言ったら感傷的かもしれないけれど、ポジティブに観るならそんな映画。

コリン・ファース演じる支配人との不倫を暴露する時に流れるヴァンゲリスの『炎のランナー』が傑作。笑

1979〜81年ごろの映画が頻繁に出てくるところも観ていて非常に面白い。『ブルース・ブラザーズ』、『オール・ザット・ジャズ』、『レイジング・ブル』、『炎のランナー』、そして『チャンス』などなど。

ただ個人的にはヒラリーの内面を描きたいのか、サッチャー政権下の黒人差別問題を描きたいのか、その二つが分かれていて、問題がバラバラになっている印象だったのが少し残念。
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