映画館というものが映画で取り上げられるだけでもうエモいと感じてしまう私、フェイブルマンズの前に急いで観に行ってきた。
「映画というのは画の集まり、その画と画の間には暗闇があるけれど、これを繋げることで、そこに(人の脳が創り出す)生きた命が生まれる」
作品中で語られるこのことのように、映画館という空間の中で、人種や年齢を超えて、お互いの暗闇に小さな光を与え合う物語。
古き良き映画館、人々の織り成すドラマはそれだけで雰囲気もあり、どうにも生きづらい問題は抱えつつも優しい人たちの物語で、暖かな良い作品だと思う。
海辺の街の映画館のある風景も素敵だし、そもそも「劇場」好きにはあの映画館そのものが心躍る風景だ。
ただ、個人的には違和感もあって、これ、わざわざ恋愛要素入れる必要あったのかな…とか、医師との間で交わされる、治療の内容で推測できないと、主人公の抱える問題が別物に見えてしまう、とか。
なんというか、ごめんだけど、別にこれ、未来を見据えたときに、これまでの自分の人生なんだったんだろ、ってハッと気づいてしまう「更年期のゆらぎ」を抱える主人公だとしても、歳や人種の違う者たちの友情だったとしても成り立つ話じゃない?
…と感じてしまい、変な「無理くり感」で没入しきれなかったのはある。
実際私は、割と始めの方はずっと「年を重ねた今、これまで流されてきた不毛で便利に扱われてる関係には先が見えないし、未来に不安しかなかなくて時にイライラが募る」「でも若い魅力的な男性と仲良くなったらやっぱ悪い気はしないし、なんならちょっと浮かれちゃうよね」なお姉様なんだと思っていたよ…
これは、別に偏見とかバカにしてるとかじゃなくて、自分もこの年代の一員だから、余計周りに当たり前に転がってるようなことで、そっちの方が普通にリアリティあるよ、ってこと。
この設定にすることで、何か物語が深みを増した…という感覚は得られなくて、ちょっとそこが勿体なくて、もっとシンプルで良かったんじゃないですか?って感じです。
その辺の意図がいまひとつ響かず、残念。
普通に良い話だと思うんだけどねえ…
同僚たちもさりげなく素敵だしさ。