Pam

エンパイア・オブ・ライトのPamのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
4.5
切ないわ。
切ない。
『日々の名残』のラストを思い出させる

オリビア・コールマンにはずれなし。
映画監督たちによる『BABYLON』『The fablemans』で映画称える映画を多く見てきた今年だけどこれもいい。これも外せない。

とにかく最初の5分でこの映画館の美しさに目を奪われる。見たところ普通の海辺の街の映画館。でもこれだけ映画館を舐めるように映す画面にもう没頭する。今からこの映画館の話になりますよ〜というご挨拶。


父にも傷つけられ、上司にも弄ばれ、周囲の男に利用され続けた女。

彼女はスキゾフレニアを患っている。

彼女は映画館で働く地味な現場の古株。外観も冴えないし趣味らしい趣味といえば社交ダンスクラブぐらい。そこでも仲のいい人はいない。一人参加なのでパートナー男性も一人のおじいちゃんばかり。

1981年、時代が変わる前。炎のランナー上映、フォークランド紛争前夜。サッチャーが首相になり、地方でスキンヘッド暴動が起こっていた頃。

彼女がはじめて同年代の女性に感謝を受けたとき映画があった。

あのときはまだ映画のフィルムをこんなふうに運んでたんだね。。映写室の技術者という仕事がまだあった頃。

私は覚えてる。映画のフィルムを変えるときに黒い点が見える事、字幕でフィルムを破らないように日本語にひらがなだって線と線が合わないようなフォントで書かれていたこと。。。『炎のランナー』と『アマデウス』『インディ・ジョーンズ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がほぼ同時期でロードショーで私はこれらで育ったこと。そして今いるこの土地も仕事も家族も子供も本や映画や学校職場全てで学んだことの集成。映画館の時間が大好きだったこと。

私はトーキーはしらないが、フィルムの時代は覚えてる。

映画は技術の歴史。スピルバーグも映画でお父さんが言ってたよね。

ほんとこの映画のアプローチは映画そのものではなく映画に関わったであろう一人の名も無い女性の話。

バビロン、The fablemansより好きになったかも。ありがとう。映画好きなのはみんなこういう女性。こういう私達が映画を支えてる。映画を愛し、夢を見させてもらってる。つらい日常を、そして美しい日常も映画に重ねる。

ありがとう。
Pam

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