ゆかちん

エンパイア・オブ・ライトのゆかちんのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
3.0
“人生を照らす光は、きっとある。”


イギリスの海辺の町の風景がとても良かった。。。行ってみたくなる。
舞台となった町は、風景画家ウィリアム・ターナーが愛した地ということで、なるほど…となる。
静かでシンプル、繊細で素朴な町。
その中の人々の感情の波。

光の使い方も綺麗。
花火のとことか絵的に凄く綺麗だった。
建物や風景含めたワンシーンワンシーンの絵も美しい。
絵画でいうなら細い線で繊細に描くような。

こういうのはサム・メンデスならではなのだろうか。

人と人が出逢って、その影響でそれぞれ前向きに進むようになるというのは良いなぁと思った。
たとえ完全ハッピーじゃなくても。




厳しい不況と社会不安に揺れる1980年代初頭のイギリス。海辺の町マーゲイトで地元の人々に愛されている映画館・エンパイア劇場で働くヒラリー(オリヴィア・コールマン)は、つらい過去のせいで心に闇を抱えていた。
そんな彼女の前に、夢を諦めて映画館で働くことを決めた青年スティーヴン(マイケル・ウォード)が現れる。
前向きに生きるスティーヴンとの交流を通して、生きる希望を見いだしていくヒラリーだったが……。



めちゃめちゃわかりやすいとか派手さはないかもしれないけど、ジワリジワリとその心情や難しさが滲み出る。

虐待、セクハラ、人種差別、精神疾患、夢を追うか諦めるか…。。

映画自体は地味めな印象もあるけど、現代もある問題がギュッと詰まってる。

そんな中、ヒラリーを良い距離感で支える映画館の同僚たちが素敵。

良いヒューマンドラマやった。


ヒラリー役にMCUのシークレット・インベージョンに出てたオリヴィア・コールマン。
なるほど、確かに大女優。
演技の迫力がすごい。
何かを抜けさせられたようなフワフワした雰囲気の演技から、プチっとキレた演技まで。
心の闇、不安定、孤独、優しさ、愛情、友情…色んなのがヒリヒリ出てきててヤベェ〜ってなりました。惹き込まれる。
でもなんやろう、その貫禄のせいか実年齢より上にも見えるような。

スティーヴン役のマイケル・ウォード。
優しさ、誠実さ、無邪気さ、若さがありつつ、人種差別や色々な葛藤、などなどを爽やかに演じていた。
てか、服めちゃオシャレかつ似合う。

何気にグッとくる演技と存在感があった映写技師ノーマン役のトビー・ジョーンズ。
悪役多めやけど最近はこういう味のある役もやってるなぁ。
気難しい人のようで、とても優しく周りを支えている。
でも、そんな彼も心に深い後悔と懺悔の念がある、辛い闇を抱えている。。

エリス元支配人のコリン・ファースがクソ野郎やった!
セクハラ不倫ゲス野郎〜〜!!
完全悪い役、メリーポピンズリターンズくらいしか見てないから新鮮。


ヒラリーとスティーヴンの関係に気付き、ヒラリーたちに助言してた職場の男性、素敵やったな。ああいう仲間がいるのは素晴らしい。


ヒラリーが心の病気を爆発させたシーン(海デートの後半、エリスの奥さんにエリスとのこと暴露するとこ、ヒラリーが引きこもってるところにスティーヴンがお見舞いにきた後精神病院行きになるところ)は、どれもヒリヒリヒヤヒヤしたし、
暴徒が劇場に襲いに来るところとかハラハラした。



なんかジワっと良かったのは、スティーヴンのお母さん。
息子とは年齢の離れたヒラリー、しかも精神的に不安定。でも、息子が明るくなっていったのを感じ取って、それをヒラリーに伝えていたのグッときた。息子の気持ちを汲み取るし、干渉せず息子の判断を尊重しようという懐の深さ。

あと、仕事中に職場の映画を見るのは良くないと真面目にいたヒラリーがノーマンに初めてここで映画を見たいと頼んだときに彼が映画を見せてあげるところ良かった。
ヒラリーが次第にキラキラした表情になっていくのが素敵。
サム・メンデスの映画愛を感じた。


ヒラリーとスティーヴン、お互い嫌いになったわけではないし、むしろ好きだけど、スティーヴンがヒラリーに言われたように夢を追いかけて大学に行くことにし、ヒラリーも辛いながらも彼を送り出した。
今後2人の関係が続くのかはわからないけど、最後のヒラリーの笑顔をみて、後味が清々しく前向きになれる作品だな〜と感じた。

ヒラリーにとって、ずっと自分は劣等感、否定される恥ずべき存在だと傷つき続けていたけど、スティーヴンと出逢い、映画館の仲間たちの優しさを感じ、自分を肯定して前向きに過ごせるようになるんじゃないかな〜って。

人との出逢いが人生を変えるっていう、素敵な映画だと思いました。
ゆかちん

ゆかちん