このロケーションと雰囲気だけでも好きだなぁ思える作品だった。温かな空気を感じるのは、映画愛に包まれているからかな。
サム・メンデス監督はコロナ過で消えゆく映画館への不安や郷愁を描いているとのこと。美しい映像は、ロジャー・ディーキンスの撮影によるもの。映像と音楽で加点です。
1980年、かつては華やかだが今は時代と共に寂れた海沿いに建つ映画館“エンパイア劇場”。そこで働くちょっと冴えないけれど温かなスタッフたち。
辛い過去から精神的に不安定な女性統括マネジャーのヒラリー(オリヴィア・コールマン)の前に新人スタッフとして現れた若い黒人青年スティーヴン。彼との出会いでヒラリーの止まっていた時間が少しだけ動き出す…
人種や年齢を超え結びついていく二人。ヒラリーが恋に盲目になっていく様子が痛いのだけど、ちゃんとわきまえているところが大人の経験値であって、逆に切ない。
黒人差別主義が横行する時代でもあり、スティーヴンの生きづらさが観ていてしんどい。しかし監督は、黒人青年を絶望だけでは終わらせていない。若者スティーヴンには未来という希望の光を。ヒラリーには老いと孤独という現実が待っているのだけれど、彼女には映画での癒しを。
「人生とは心のあり方だ」
切ないけど生きて行くとはこういうことなんだ、映画が心を慰めてくれる。『チャンス』を観てみよう。
オリヴィア・コールマンは『女王陛下のお気に入り』も素晴らしかったけど今作もよかった。でもエッチシーンは観ていてキツイかな…
味のある映写技師を演じたトビー・ジョーンズがよかったなぁ。紳士なイメージのコリン・ファースがパワハラなスケベ上司役なのは浮いてました。