ぶみ

ノートルダム 炎の大聖堂のぶみのレビュー・感想・評価

ノートルダム 炎の大聖堂(2022年製作の映画)
4.5
嘘のような真実が、794年の歴史を変える。

ジャン=ジャック・アノー監督、サミュエル・ラバルト、ジャン=ポール・ボーデス等の共演による実話をベースとしたフランス、イタリア製作のドラマ。
2019年4月15日、フランスのパリにある世界遺産、ノートルダム大聖堂で起きた大規模火災の消火にあたる消防士等の姿を描く。
ノートルダム大聖堂の火災と言えば、記憶に新しいところであり、本作品は再現率98%とされているように、火災のリアリティが売りの一つであるが、その謳い文句どおりの出来栄えを誇っている。
大聖堂の美しさやスケール感を始め、スクリーンから熱が伝わってきそうな炎の映像に加え、実際の火災の様子やニュース映像、マクロン大統領の姿を交えながら展開していくが、どこまでが本物で、どれがフィクションなのかの区別がつかないほどであり、圧倒的な没入感を得ることができる。
また、死者ゼロとあるように、建物内にいた観光客は早々に避難していたことから、通常のパニックものにあるような人命救助ではなく、いかに消火するのか、建物が崩れないようにするのか、はたまた中にある収蔵品を外に出すかといったことに焦点が当てられており、そういった事態に対峙する消防士のお仕事ムービーとしても楽しめるとともに、現場に消防車が近づけなかったり、水圧が低かったりといった問題点もしっかりと描いており、美談で終わらせていないのは共感が持てるところ。
火災を扱った作品と言えば、ジョン・ギラーミン監督『タワーリング・インフェルノ』や、ロン・ハワード監督『バックドラフト』を思い出すところだが、実話ベースということを考えると、ジョセフ・コシンスキー監督『オンリー・ザ・ブレイブ』寄りではあるものの、消防士の背景は極力廃されているため、よりドキュメンタリーに近く、かと言ってエンタメ要素が少ないわけでもなくと、絶妙なバランスが保たれており、前述のような偉大なる作品に肩を並べるだけの実力を持っているとともに、大スクリーンで堪能したい力作。

生きて戻れよ。
ぶみ

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