ノラネコの呑んで観るシネマ

ティルのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ティル(2022年製作の映画)
4.5
1955年の夏、シカゴに住む14歳の黒人少年エメット・ティルが、親戚を訪ねた先のミシシッピで白人にリンチの末惨殺される。
理由は白人女性に向かって口笛を吹いたから。
凄惨な暴行の痕跡が残る遺体を見た母のメイミーは、世界を変えるべく行動を起こす。
映画の前半は事件の顛末で、後半が裁判劇。
実話ベースだが、公民権運動に重大な影響を与えた有名な事件だし、この時代の南部で起こったことなので、観る前から結論は分かっている。
とにかく理不尽な出来事が次々と起こり、それが全く何も正されない状況にストレス指数MAX。
出来れば、精神的に元気な時に鑑賞した方がいい。
アメリカの歴史は、保守とリベラルの間を揺れ動く振り子だと言われる。
この時代の様な制度的な差別は減少したが、あの手この手で差別構造を固定化しようとする力は、今も働いている。
アフタートランプの現在から見ると、振り子を元に戻さない努力が必要なことがよく分かる。
メイミー役のダニエル・デッドワイラーが出ずっぱりの大熱演だが、プロデューサーでもあるウーピー・ゴールドバーグが、メイミーの母親役で強い印象を残す。
出演時間はわずかなのに、さすがだな。
ブログ記事:
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