EDDIE

ティルのEDDIEのレビュー・感想・評価

ティル(2022年製作の映画)
4.6
あまりにも恐ろしい人間の憎悪と平気で嘘をつく悪寒。これは差別の物語?否、殺人事件の実録だ。なぜそんなことができるのか。なぜ平気で生活できてるのか。あえて人種には言及しない。いかに愚かで恥ずべき出来事なのか、考えればわかる。母の決意に拍手。

本作は本当に凄まじかったですね。
主人公のメイミーには大切な14歳の息子エメットがおり、その息子が生まれ故郷を初めて離れ、仕事をしにいくんです。
親戚のもとをたずね、綿花の栽培の仕事をするんですが、生まれ故郷のシカゴでは想像もできないほどの南部の白人至上主義に驚かされます。
母には口酸っぱく白人には歯向かうなと言われていても、彼はやはりその厳しさを知らない分生来のお茶目でお気楽な部分が出てしまったわけです。

そこからはネタバレにもなるので細かい言及は避けますが、あらすじにもある「エメット・ティル殺人事件」という実在の事件、つまり彼は白人集団に拉致されてリンチされて死亡してしまうんです。
ここまでで彼の優しい人柄やお調子者な部分、母親を愛し仲睦まじい模様を見せられた後に、本当に衝撃的な映像を見せつけられます。

そして母メイミーの決意の言葉、表情、この一連のシーンを見せられて、僕は涙を我慢できませんでした。
そこからは裁判劇に移っていくんですが、とにかく白人と黒人の当時の立場の違いやどうしようもない黒人の圧倒的な地位の低さ、これらを見せつけられていくので、どんどん苦しくなるとともに観ているこちら側もしらばっくれる白人たちに怒りが増幅していきます。

そういう意味では白人側の1人であるキャロリンという役を演じたヘイリー・ベネットが素晴らしかったですね。
というか本当に腹立ちました。今年のベストヴィラン候補の1人と言っても良いでしょう。マジでなんだよこいつと。

あまりにも壮絶で腹立たしくもなる作品ですが、心を揺さぶられるシーンも多く本当におすすめです。
今年のベストを決める前にこの映画をぜひ観てください。

〈キャスト〉
メイミー・ティル(ダニエル・デッドワイラー)
アルマ(ウーピー・ゴールドバーグ)
エメット(ジェイソン・ホール)
ジーン(ショーン・パトリック・トーマス)
モーゼ(ジョン・ダグラス・トンプソン)
キャロリン(ヘイリー・ベネット)

※2023年新作映画167本目
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