1955年に実際に起きた「エメット・ティル殺害事件」を題材にした作品。
この事件における被害者の母親メイミーの活動が、キング牧師らの公民権運動を加速させる原動力になったということですが、こうした黒人を蔑ろにする凄惨な事件は、本作の件に限らずたくさんあったのでしょうね。
メイミーの行動というのは、とんでもなく勇気のいるものであったであろうし、声を上げられずにいた遺族がほとんどだったのではないでしょうか。
メイミーを演じたダニエル・デッドワイラーの表情の演技が、堪らなく辛い。
黒人差別を題材にした作品はたくさんあり、どれをとっても胸糞悪くなる内容ばかりで、鑑賞後の気持ちは果てしなく沈むわけですが、本作の事件とメイミーの活動が、2022年に成立した人種差別に基づくリンチをヘイトクライムとした「エメット・ティル反リンチ法」に繋がったことだけが唯一の救いでしょうか。
事件から60年以上も経って成立しているのも異常ではありますが。
こうした事件があったことを知るというところで、とても意義のある作品。
