ねむろう

ティルのねむろうのネタバレレビュー・内容・結末

ティル(2022年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

2023新作_257


まだ、始まったばかり――


【簡単なあらすじ】
1955 年、イリノイ州シカゴ。
夫が戦死して以来、空軍で唯一の黑人女性職員として働くメイミー・ティル(ダニエル・デッドワイラー)は、一人息子で 14 歳のエメット:愛称ボボ(ジェイリン・ホール)と平穏な日々を送っていた。
しかし、エメットが初めて生まれ故郷を離れ、ミシシッピ州マネーの親戚宅を訪れた際に悲劇は起こる。
エメットが飲食雑貨店で白人女性キャロリン(ヘイリー・ベネット)に向けて「口笛を吹いた」ことが白人の怒りを買い、1955 年 8 月 28 日、彼は白人集団にさらわれ、壮絶なリンチを受けた末に殺されて川に投げ捨てられた。
我が息子の変わり果てた姿と対面したメイミーは、この陰惨な事件を世に知らしめるため、常識では考えられないある大胆な行動を起こす。
そんな彼女の姿は多くの黑人たちに勇気を与え、一大センセーションとなって社会を動かす原動力となっていく――。



【ここがいいね!】
1955年のアメリカ・ミシシッピ州では、実際にこんなひどいことが行われていたのだと、そして、もしかしたらアメリカや世界に、黒人に対する差別意識っていうものはあったのだろうと思いますし、胸が苦しくなるような映画でした。
シカゴの町で育ったエメット少年は、全く「何も」知らず無邪気に成長して、そしてそのままミシシッピーへ行き、皮肉なことにそのままの彼が出たことによって殺されてしまった、ということを考えるととてつもなく切なく思います。
作品の中では、エメット少年が亡くなった後に、別々の女性が別々のシーンで慟哭する場面がありましたが、非常に圧巻のシーンでした。
母親と、エメット少年が夏休みを過ごすために訪れた親戚のおばさんなのですが、その二人が悲しみに沈んでいるということが、目にも耳にも明らかなシーンになっていました。



【ここがう~ん……(私の勉強不足)】
作品では、エメット・ティル殺害の容疑で起訴された2人は無罪になってしまったということがありましたが、その後、公民権運動に発展し、60年代の公民権を勝ち取るという動きに繋がったと説明されていました。
もちろんその中で、キング牧師だったり、マルコムXという人々が登場するのでしょうけれども、そこにつながるような話もあったらおもしろいなとは思いますが、それをつなげてしまうと、また別の話になってしまうっていうところもあるので、難しいのかなというところもあります。



【ざっくり感想】
そもそも南北戦争から100年経って公民権が勝ち取られて、そしてそこからまた60年ぐらい経とうとしている現代の2023年でも、人種差別やヘイトクライムはあとを絶たないですし、自分自身もどんな人種であろうとフラットに見ようと心がけてはいますが、何かしらのフィルターはかかってしまう可能性があるかもしれないと感じてしまうような作品でした。
人間が人間としての尊厳を守る、それは自分自身もそうですし、相手の尊厳も慮れるような人間や社会が作られていくにはどうしたらいいのかなということを考えさせられるような作品でした。
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