みむさん

TAR/ターのみむさんのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.0
ベルリン国際映画祭にて。

ベルリンで始まりベルリンに戻ってきたということで上映前に監督が感極まっていた。
音楽は「ジョーカー」「ボーダーライン ソルジャーズデイ」のヒドゥル・グドナドッティル。

面白かったが、158分はちょっと長いなぁ…。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の女性首席指揮リディア・ターのメンタル崩壊物語、天才が壊れていく物語に見え、サイコロジカルスリラーに見えた。
なんとなく実在の人物かと思ってたが架空の人物とのこと。

今回のケイト・ブランシェットの演技はいろんな種類の狂気みたいなもの、怖さ、ヒヤヒヤ、圧、生々しさ、身勝手さ、全てが詰まっていてすごい。スクリーン隔てて見てる側すら怯むぐらい。圧倒されるってまさにこういうことだな。
そして一部「she said」と通じる部分もあった。

ケイトが演じるリディアとニーナ・ホスが演じるバイオリニストのシャロンが同性婚夫婦、養女あり。
才能と権力で周囲を威圧しセクハラはするわで、リディアはかなり難ありキャラ。ワインスタインとやってることあまり変わらないのでは?と思ってしまう。

自分の才能ゆえ周囲をコントロール出来ていたと思っていたリディアが一つの告発からどんどん崩れていく。転落人生そのものだった。

一つ勇気ある告発が出ると、次から次へと告白が続きスキャンダルが露になり、周囲の態度が変わっていく様はまさにワインスタイン状態じゃないかしら。
キャンセルカルチャー、作家と作品は切り離して考えるかどうかということも近年実際によく見ること。

精神的に病んでいく話だなぁと思っていたらもっとえらいことをやらかしてしまうほどで、なんとも苦々しい気分て見終える羽目に。

まあでもケイト・ブランシェットのこんな役を観るなんて。ケイト様の圧がすごい。こういう役は演技が上手ければ上手いほど面白いよね。そりゃオスカーノミネートも納得。

サイコスリラーに見えるが所々苦笑いでブラックコメディか?と思う部分もあったりでなんともいえぬ後味を残す。「!?」のラストはどう解釈したらいいのか戸惑う。