Ryoma

TAR/ターのRyomaのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.2
全体的に長めの間やカット割りが印象的で、サスペンスフルな構成やあからさまには怖さを感じさせない絶妙なホラー的要素や演出、登場人物の少し意味深な発言やシーンなどを感じハラハラしながら楽しめた。同時に、誰しも少なからず抱えている憎悪や嫉妬などが炙り出される様や承認欲求を得られたいがために反道徳的行動を取ってしまう人の心理描写が巧みに表現されていてヒューマンドラマ的要素も強く感じた。疑念の目を向けられ信頼感を失うと人間の心は容易く壊れてしまうほどに脆く儚いものであるのだと改めて思い知らせられた。そして、誰にも凶暴性や攻撃的側面も持ち合わせていて、それが表面化・露呈したときの恐ろしさは凄まじいなと、人間の怖さを改めて感じた。
ゴールデングローブ賞受賞・アカデミー賞主演女優賞ノミネートされたというケイトブランシェットの秀逸な演技は頷けるほどに圧巻だった。
女性指揮官という設定から、様々な管弦楽器で奏でられる交響楽団の演奏は実際のコンサートに来たかのような音響や迫力で映画の作品としてだけではない、満足感を得ることができた。
随所に張り巡らされていたであろう伏線は個人的に回収できていないところが何箇所もあったり、作品が掲げるメッセージもうまく完全には吸収、昇華できていないのが正直なところ。また観直したい。
Ryoma

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