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TAR/ターのsymaxのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.8
"皆さんは、よくご存知ですよね?…リディア・ターは、ベルリン・フィルで女性初のマエストロに抜擢されました…現代の音楽界はターが牽引しています…"

今やリディア・ターは、クラシック音楽界において無双とも言える存在なのだ…ターは、時間をも操る言わば…神…

ベルリン・フィルで唯一録音されていないマーラーの交響曲第五番のライブ録音が迫り、自らが理想とする高みへ導こうとリハーサルを繰り返していた時、かつての教え子の自死を知るター…そして弁護士を雇うようにとのアドバイスを受けるが…

ケイト・ブランシェットの鬼気迫る凄まじい演技の洪水…いや…音の洪水と言うべきか…兎に角、溺れた159分間…

エンディング・ロールかのようなオープニングから長回しのインタビュー…冒頭から"リディア・ター"という天才マエストロの紹介の後に、同じく長回しでターの授業に参加して分かる事…

…凄い人だけど、凄いヤな奴…

簡単に言えば、頂点を極めたターが転落し、再生?するお話なのですが、直接的な表現はないものの、ターの行動一つ一つが実に巧妙なハラスメントで胸糞悪く、下手なホラーよりも怖い…

アシスタントのフランチェスカを演じたのは、名作"燃える女の肖像"での演技が印象深いノエミ・エルラン。

今作でもターに対する愛憎両方が混じった眼差しが印象深く、ター転落の一端を作ったのは、フランチェスカではないかと…そう思わせる闇の深さ…

ラスト・シーンは、色々と解釈出来そうなのですが、冒頭で"バッハが嫌い"と反発した学生マックスの態度にキレたターが言い放った"あなたはどんな基準で評価されたい?"との言葉が強烈なブーメランとなってターに返ってきているように思えてなりません…
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