コマミー

TAR/ターのコマミーのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
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【狂気の果て】





これは私は本作を正統に評価できない。

勿論、本作はこれまでにない人間ドラマになっていたし、"ケイト・ブランシェット"が演じた"リディア・ター"は、あの「エリザベス」2作の演技を彷彿とさせるものになっていた。この作品の"音楽の揺れ"と"息づかい"、"台詞の言い回し"は、映画館でこそ体感すべきだし(熊谷のCine Tiara21の独自の音響システムCDPS、めちゃくちゃ良い)、本作のあらゆる面のこだわりが凄かった。

だが、このリディア・ターが振りかざす"権力の暴挙"やそれがもたらす彼女の"最終的な運命"などを見たら、恐ろしすぎて評価が難しかった。"若い女性指揮者"を"異性の対象"として扱ったにも関わらず、人生の奈落の果てに落とし、その証拠を権力の維持の為に"隠蔽"しようとし、周りの人々をも巻き込む。
そんな彼女にも"キャンセル・カルチャー"が起き、"ベルリン"に居場所が無くなった彼女が"辿り着いた運命"…私はずーと一種の"サイコ・ホラー"を観ているようで怖かった。

ただこの私の"感覚"は、一種の感覚に過ぎない。これは"見る角度"によって、感想が変わる作品だと言う事だ。これは監督である"トッド・フィールド"が描く、"人間性の集合体"のような作品になっていた。
だからこそ、見た人によって全く異なる作品になっていたし、それは監督の"見てきた映画界"にも関係する事だと感じた。

これは充分リアルな人間の"狂気の成れの果て"なのである。
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