前知識なにもなく、伝記映画かなと思って観ていたので、鑑賞後、主人公のターが架空の人物と確認してびっくりした。
ベルリン・フィルにこんな名前の女性の常任指揮者いたかしら?とか、バーンスタインの弟子にいたかしら?などなど引っかかるところは多々あったのに「なんてよく撮られたドキュメンタリー風映画だろうか」なんて感心しながら観ていた。
ブランシェットをイメージして書かれた脚本とはいえ架空の人物をここまで作り込んで、リアリティ溢れる指揮者像を演じてみせるってどんだけの演技力なんだ…!!
マーラーの五番はバーンスタイン指揮のものが名盤と言われていて、それを弟子がLIVE録音するというシチュエーションも出来すぎなくらいの設定ではなかろうか。
フルトヴェングラー、カラヤン、バーンスタイン…ベルリン・フィルを指揮してきた名指揮者たちの名前がぽんぽん出てくるあたり、終盤のバーンスタインの言葉にターが涙する辺り、ほんとにやられたよ…。
音楽とは、作曲者と指揮者の関係は、などなど至極当然とばかりに説得力持って語られる音楽論(長台詞)…ああ恐ろしい。
日常のノイズ、人間関係に次第に足を引っ張られ転落していく様は感情移入こそできないけれど「うわあああ」って叫びたくなる。
音楽だけに没頭できていたら現実に煩わされることもなかった(かもしれない)のに、現実のままならなさよ…。
マーラーの五番を大音量で無性に聴きたくなりました。