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TAR/ターのマのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.6
最初から最後まで音の絞り方が凄い、静けさと環境音か映画館の機材が出してるノイズレベルにしか聴こえない劇伴で2時間40分引っ張る演出力はマジだと思う サントラを「アルバム」として作り出したHildur Guðnadóttirも流石。ケイト・ブランシェットの目が怖い、時々CGが作り上げた人の顔に対する緊張感的なもの(不気味の谷?)を感じる、指揮を取る時は言うまでもなく良い。

アーティストのしてきた事は音楽と切り離すべき と言いながらオーディションでの候補者選び(忖度)はする、結局そういう矛盾に気づかないまま突っ切った先に何があるか。クラシックの世界でマッチョになるだけではもう適応出来ない、でもマッチョになることでしか生き延びれないのが現実、だけど他者を蹴落として(というか蹴り殺して)生きても呪われる、あの機械音からインスピレーションを受けた(受けてしまった)楽曲はTARの生き様とその因果として憑く。壊れてるのはTARではなく社会なんじゃないの?

何故TARの行為に強烈な嫌悪感を感じるかといえば、それはオーディションの件や 子供に過剰な脅迫をしたり隣人への態度(過剰な"手"洗い)等、TARの人間性を何度も何度も見せられるからであって、勿論 人が断片的な情報に抱くバイアスの話でもあるけど、単純に「行き過ぎた正義の批判じゃ〜」「アンチMeTooムーブメントじゃ〜」みたいな映画ではないと思う(役者が男性だったらコレを主張する人もいないんじゃ...) かと言ってキャンセルカルチャーの話じゃないとは言い切れない、隙間の多い描写に留められてる トッド・フィールドはどちらかに規定できてしまう描写やストーリーを絶対に作らない。

やっぱり最後に対峙しなきゃならないのは(映画が映画として対峙させてくるのは)こっち側になりがち、音楽の話として帰結したと感じた。クラシック音楽に詳しくなくてもいい事はエンドクレジットの選曲で説明されてる まさにちゃぶ台返し。アジアを下に見てんのか!っていう意見も(左遷先としてアジアを使う実際の欧米の業界に対する批判としてなら)わかるけど、それでもラストはハッピーエンドでしょ
...と言いたいけど、演奏者の中に貧乏揺すりをしてる子がいる。わかりやすい答えを言わせないスキのなさ。

映画の汚し方がうますぎる。せっかくなのでFetty Wapを聴きながら帰り、家でTrap Nationを聴き直してレナード・バーンスタインの番組を見てるTARと全く同じ顔に...
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