はますけ

TAR/ターのはますけのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.4
屈辱的なヘッドフォンでも、指揮者は指揮台のみが居場所。これが悲劇か日常か。視座によって大きく異なると思う。

途中、多用される長回し含め指揮者のドキュメンタリーかと錯覚するぐらいのクラシック音楽に対する考えや対峙の仕方、話を聞いているだけでとても興味深く面白かった。それだけケイトブランシェットの話し方、仕草が完璧だけど、オルガに翻弄されて動揺されるところはどんなカリスマ性あっても人間だなって感じでかわいい
小ネタも満載で、フルトヴェグラー(ちょっと前にNHK「映像の世紀」でみた)の話とか、遠目からの胸像でなぜか分かっちゃうカリンニコフ(鉛筆?盗むための口実かもしれんが)とかおもろい。裸足でピアノ弾くのはアリス紗良オットみたい。ちょっとだけでもショスタコーヴィチ出てきたの嬉しい。ただ拾いきれてないもの・勉強不足含めもう一度観たいと思った。偉大な先人たちの音楽学ばなくとも、SNSとかでのしあがれるのはなんとも今時だよな…

呼び鈴の音からのマーラー5番の移り変わり方は素晴らししいし、かっこよすぎて痺れた
ただし、最後の表舞台を歩くのが葬送行進曲でメタファーがすぎる。そういえば、アダージェットを繰り返し使っていた『ベニスに死す』は老作曲家の同性愛だったな…

長くはないが、大きなスクリーンと素晴らしい音響でオーケストラ聴けるのはめっちゃ幸せ
とはいえ、アマオケ奏者として、自分がステージ立ってないのに演奏始まってるのは恐怖すぎていつか夢に出てきそう。
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