きょ

TAR/ターのきょのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
5.0
指揮棒に従い、ケイトブランシェットに酔いしれる

権力を持った人物の転落を凄く自然に、且つ不気味に描いていた。
主演のケイトは音に敏感であったり、やや独善的であったりと才能を持つ者の素質を隅まで感じる素晴らしい怪演だった。

音楽業界において、ハラスメントは軽視されがちである。
というのも、ある意味必要な存在であるから、皆が当然のように受け入れているのだ。
狂気無くして芸術は輝かない。
特に音楽は、誰か1人の天才に皆で寄りかかっている場合がほとんどである。

確かにインモラルな振る舞いや、他者を支配下に置き操ることはよろしくない。
しかし現在では、そうして何人もの天才が葬られてきた。
人類は自ら、芸術文化を衰退させようとしている。
芸術家個人と作品を結びつけるのは、個人的には大反対である。

その証拠に、彼女の作り出す音楽は大いに評価されていた。

結局、彼女は音楽を愛していた。
この結末は切なく、しかし不屈の精神の現れにも感じた。
きょ

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