しゅん

TAR/ターのしゅんのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
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身近な他者からのしっぺ返し→苦い再生の流れを描く、複雑なようで非常にシンプルな映画。「こうやって人は子供ではいられなくなる」という通過儀礼の話でもあるが、ケイト・ブランシェットが子供の演技をしているところに面白みがある。

ハラスメントや権力構造の変化ではなく、身近な人を蔑ろにすることによってリディア・ターのキャリアと自己像は崩れる。だからこれは青春の挫折のようなものだ。ターが滑稽かつ悲しいのは、そこそこの年齢に達してから挫折に出会う人だからだろう。しかしそれは、大人になってもやり直せるという希望でもある。メダルを首に下げた長身の子供は「マッサージ」と「5番」の吐き気を通過して、ようやく次に移行できる。
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