ぐるぐる

TAR/ターのぐるぐるのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

性差別的な思想が色濃く残るクラシック界でのし上がった女指揮者
パートナーとの生活と仕事の両立、一見華々しい経歴の持ち主だけど、物語が進むに連れて彼女の本性がチラついていく

告発された内容について映画内で描かれることはないものの、娘ペトラをいじめる女の子に対して、脅迫の言葉を吐き捨て爽やかに去る姿を思い出しても、色んな可能性を否定できない
「お前が何を言っても誰も信じてはくれない」
その理由として幼い少女に対して語ったのは「貴方が言いつけようとしてる相手は大人で、私は大人だ」という話
クリスタと彼女の間に何があったのかは分からないが、ターが立場を利用してそういった言葉を脅迫に使ったことは大いにありうる
突然の助手の失踪もそれを裏付けてしまう

全ては彼女のやってきたことのしっぺ返しのような展開ではあるものの、悲劇なのか喜劇なのか
ラストの彼女の深々としたお辞儀と満面の笑み
最初は皮肉なのか?全ては悲劇だ!転落し追放された笑ってくれ、天才はこうして殺され消費されていくみたいなオチかと思ったけど、転落ではなく新たな始まりとして新たな土地で指揮者という天職を続けられる喜び、快感に身を委ねられる笑みだったのか…

物語の色んなヒントを拾いきれていない気もする
冒頭からこの映画変だとなるエンドロールスタート、盗撮みたいな映像、情報過多な経歴説明
音への過敏さの演出や、不気味な夢、時間が飛ぶなど、ターが徐々に崩壊していく後半はホラーじみた演出も増えて怖かった
隣の家の不都合な真実を知ってしまった彼女の反応も異様
今まで自分のやってきたことにもあんな風に対応してきたのだろうか、見たくない現実にはデタラメな音楽で蓋を…

色々と怖い話で最後も人によっては解釈が分かれそうで、どう捉えようかと悩める時点で良い作品
ケイトブランシェット引退しないでという気持ちとこんなのやったらそりゃ疲れるから縁側で麦茶飲んでのんびりしててほしい気持ちがせめぎ合う