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TAR/ターのFewのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
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この映画を観た後に、今日リリースされた田中泯さんのインタビューを読んだ。

田中は会見の終盤で「一番、感じ続けているのは、一般というか国民というか、多くの人たちを、作る側がばかにしているんじゃないか」と訴えた。

(中略)

「映画に初めて出てから20年と少し、テレビドラマとかNHKの朝ドラとか出てるんですけど、日本人であるだけで、文化をすごく享受していると、すごく思う。ですから、映画にしてもテレビドラマにしても、見る人を、もっと、もっと引き上げるべく作る必要があるんじゃないか。現在に合わせて作るものばっかりになんですよね」と訴えた。ー引用:日刊スポーツ


この映画はまず前提説明みたいなものが抜けている。でも辛抱強く、登場人物らの話に耳を傾ければわかってくる。だがわかるのは、ごく一部分まで。映画の内容も、脚本や演出の姿勢も、観客を試してる。
それでいて、女性指揮者がここまで登り詰めて実績を出し続ける難しさと、ケイト・ブランシェット演じるターの音楽に対する、指揮に関する美学を地至極丁寧にみせようとしているし、いくつかの日常の会話劇をみせることで組織構造やパワーバランスのゆらぎも伝えてる。
本当に無駄がない。

ショーペンハウアーによる雑音への見解を示しつつ、部屋に響く奇怪な雑音や車のダッシュボード付近から聞こえる雑音も、彼女の音楽美学だけじゃなくて、不穏さも徐々に引き出す。その雑音がありふれていそうなものであれば、あるほど!


あと、社会の視線に滅多刺しにされ、家族にも見切りをつけられたケイト・ブランシェットが1人で指揮動画をみるシークエンス。あれが観られただけでもう、満足だった。
新しく踏み出すときは、いつも、孤独で、一人で、一歩を。ってことですな。

オーケストラの音のためにも、指揮の大きな動きのためにも、必ず映画館で観ることをすすめたい!!2000円料金になる前に!!
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