のんchan

TAR/ターののんchanのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.6
ケイト・ブランシェットを堪能しまくりました、心底素晴らしかった。
この演技でアカデミー賞主演女優賞を獲れなかったなんて信じらない、だからオスカーって信用してません。

トッド・フィールド監督が『リトル・チルドレン』の後、空白の16年間があっての新作。
ケイトに当て書きしただけある。もしケイトが受けなかったらお蔵入りしても仕方ないと考えていたらしいから。

ケイトは28歳でエリザベス1世を。
『指輪物語』のガラドリエルはケイトじゃなきゃ無理。
『ブルージャスミン』でアカデミー賞主演女優賞は当然。
他多くの作品で様々な表情を魅せているが、今回はオーストラリア出身のケイトは、わざわざアメリカ英語、ドイツ語、ピアノをマスターして臨んでいる。


女性として史上初のベルリン・フィルの主席指揮者を務めるリディア・ターは天才的能力と類い稀なプロデュース力で栄光真っ只中。
公開ロングインタビュー(圧倒の演技力で惹き込まれる)で誇らしげに語る表情へ羨望の眼差しが注がれる。
地位を築き、権力を持った傲慢な態度が周りにどんどん不信感を与えていく。
ターはレズビアンで、パートナーとの間に養女がいて自分は父親として育てている。
しかし、若い女性音楽家に肉体関係を迫ったり、将来有望な男子生徒を追い込んだり、べテラン副指揮者をクビにしたりとハラスメントを続けていく。
"マーラー交響曲5番"の演奏と録音のプレッシャー、新曲の創作に苦しみ、仕事量と精神不安定で幻聴が聴こえてくる。
そんな時、ある訃報が入り、疑惑を掛けられたターは追い詰められていく...
あっという間の失脚。まさに天から地へと...
しかし、ラストは意外な再生が始まる。


ターは架空の人物だが、この作品は多くのテーマを持ち合わせている。
権力者の盛衰。権力を持つレズビアンが周りの者への暴挙(過去の父権主義と同じに思える)
同性婚の実態。
サイコスリラーであり、また再生ストーリーにも思える。
ラストは観た者でそれぞれ全く逆の答えになるかも知れない。

生きる力があればどうにかなれる。
考え方次第。
未来は誰もが解らない。


あ〜、これはスクリーンで観たかった。それだけが悔やまれるが、大傑作だと思う。
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