えびしお

TAR/ターのえびしおのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

完全に個人的な意見だけど、キャンセルカルチャーの中でキャンセルされるものには「それはもう許してやれよ」というものと「それは何年たってもだめだろ」と思うものがある。これは人によって異なるだろう。
本作で描かれる炎上の理由の一つとして発言の切り取りによって意図が歪められた動画がある。動画での発言の意図は実際にその場にいなかった人にはわからないので、これは観客に向けた啓発の意味もあるのかもしれない。
本来の意図を誤解させるような発言の切り抜きはいただけないが、そもそもターがキャンセルされたのは普段から彼女が行っていた贔屓・不誠実・パワハラ・価値観の押し付けのためだと思う。結局、偉くなったと思い傲慢な態度をとるから人に嫌われるようになるし、取り返しのつかない事態をも引き起こしたろう。
男性社会である音楽の世界の中で、女性であることに苦労もしたのだと思うし強い態度も必要だったのかもしれない。彼女の言動は何か女性の背中を押しているようにも見える。でも有名なフェミニストの名前や国際女性デーの日付を知らないところで、女性を支援しているのはフェミニストだからではなく個人的な贔屓なのだと分かった。音楽の世界では立派かもしれないが、人間的には普通の人物だと感じた。
すべてを失いながらもアジアに拠点を移し再出発しようとするター。沈むのではなく活躍の場を変えて仕事を続ける姿はとても強いし、最後に少し見直した。