上野

TAR/ターの上野のネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

ケイト・ブランシェットの演技が素晴らしい。もはやターその人のドキュメンタリーを観ているかのよう。

しかし肝心の話は謎だらけな上に長い。
伏線が難しすぎて初見では起こっている事が正しく理解できなかった。
私は他の方の考察を見るまで「学生たちに嵌められた可哀想なター」の話だと思っていた。
ターは精神薬を飲んでいたので、映画に映る事象を全て鵜呑みにしていたわけではない。だがターが本当に性加害をしていたことに全く気づかなかった。

クリスタに問題があったから切ったのだと思っていた(「彼女の要求を見たでしょ?」という台詞もあったし)し、フランチェスカは友情でクリスタ側に付いたのだと思っていた。
オルガについてもターが音楽的な意味で気に入っているだけだと思っていた(これは私が鈍い)。オルガが媚びてこなくなったのも、自分にメリットがなくなったから切っただけかと…。
パパと呼ばせる、フェミニストについて知らない、マエストロとマエストラなどジェンダーについて疑問に思う箇所はあった。しかし「性的マイノリティだがそこに興味が無い人間」をかきたいのかと思っていた。
総じて権力を持ち自己を堂々と主張する人間は男であれ女であれ嵌められるという話だと考えていた。


しかし実際には「権力を盾に好き勝手していたターが正当な報いを受ける話」だったらしい。
………で?
男→女で今まで散々描いてきた構図を、女→女で描くのってそんなに目新しいか?
男でも女でも権力に溺れる人間はいる。
男でも女でも性加害をしてはいけない。
わざわざ映画に撮るまでもなくわかることじゃなかろうか。

あとストーリー展開に関係なく未だに分からない事がある。
・子供が「足を押さえて」って言った理由
・副指揮者とパートナーはグルだったのか
・オルガを追いかけて行った先で襲われたのか、コケただけなのか

ラスト30分ぐらいの展開も急すぎるし、絶対時間配分がおかしい。
イマイチ評価されている理由が分からない映画だった。
上野

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