前半は何だか高尚で退屈な会話がダラダラ続いて、ちょっと挫折しそう…と思っていたら、ある出来事を機にジワジワと歯車が狂い出し、ややホラー味もありめちゃくちゃ面白かった。ラストも意外な展開。
でもよく分からないところもあったので、ネタバレ解説など読んでもう一度見てみたら、退屈だった前半のインタビューや会話の内容がスルスル分かる上に結構大事で、むしろ後半に全て繋がるのが分かる。エンドロールを冒頭に流す、普通とは逆の構成もそういう意図があるのかな。「TAR」という名前をアナグラムで「RAT」に変えられる場面があるが、この綴りは「ART」にもなるというネタバレ解説を見てなるほどと思ったり…そういう緻密さがこの映画にはあるから、考察が止まらないし、見るたびに発見がありそう。
でもこれ、主人公が男性の異性愛者だったら、こういうストーリーは今までにもあったし、そこまで難解な感じはしなかったかも。主人公が女性で同性愛者だった事で、見る側が勝手にそこに意味を見出そうとすると、惑わされるのだと思う(私だけか??)し、そこもこの映画の狙いの一つなんだろう。
ケイト・ブランシェットの演技が本当に素晴らしくて、ますますファンになりました〜!