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TAR/ターのharuのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.5
すべてを支配するために。

ベルリン・フィルで女性として初の指揮者として活躍するリディア・ターは、公私共に順風満帆。ところがかつての教え子クリスタが自殺すると、リディアにある疑惑が浮上する。

ケイト・ブランシェット史上最高の演技なんじゃないかってくらいの、リディア・ターの圧倒的な存在感。驚いたことに、なんとこれフィクションらしい…!鑑賞後に「リディア・ター」について調べる人が続出するほどに(私もその一人)作り込まれたキャラクターです。元々ケイト・ブランシェットが演じることを想定して脚本が書かれたとかで、確かにピッタリすぎる…!
女性初のベルリン・フィルの指揮者として、数々の障害を乗り越えながらも美しく頑張る偉人の話…かと思いきや、全然違った。リディアったら、そこそこ性格悪いネ!確かに芸術の世界でトップとるなんて、凡人には理解できない苦しみやプレッシャーがあるのはわかりますが、部下は使い捨て、パートナーがいるのに浮気三昧と、とにかくセクハラパワハラやりたい放題。しかし彼女の才能は確かなので、周囲の人間はひたすら我慢、我慢、我慢!せいぜい裏で毒づくぐらいしかできないのです。
ところが元教え子が自殺したあたりから、雲行きが怪しくなっていきます。これまで常に彼女の顔色を伺い、媚び諂っていた人々が、一斉に彼女の元から離れていく。つまりリディアはそのような人間だったわけなんですが、なんだか胸が痛んだのは、彼女の音楽に対する情熱は本物だったから。冒頭のインタビューだって、テキトーに答えることだってできるのに、一つ一つの質問にしっかり答えていたし、仕事はもちろん常に全力投球。それだけに終盤彼女がしでかした事件は理解できる。なんでオマエなんだよ!って、キレたくもなる。
ということで、改めてケイト・ブランシェットが好きになりました!
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