マルケス

TAR/ターのマルケスのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.0
難解な作品だった。そもそも冒頭でチャットをしているのは誰と誰? ターを狼狽させた本、赤髪の女性、先住民シピボ族の歌と幾何学模様、廃墟のようなオルガの家、悲鳴、様々なノイズ。初見では半分しか理解できていなかったと思う。

3回くらい見返し、さらに幾つかサイトを読んで、ハアッーと溜息。ホラー要素もあり、現実なのか幻想なのかもあえて曖昧にしている。フィールズ監督、絶対ワザと解りにくくしてる(怒)。

リディア・ターはベルリン・フィル首席指揮者にしてEGOT受賞者、まもなく自伝も出版という輝かしい経歴の女性。
ターの揺るぎない絶対的信念は自身の音楽を表現すること。その為に権力を必要とし、汚い手段も使い感情も利用した。ターの言葉は正論だとも思うが、やはり権力者のエゴが鼻につく。

そんな栄光からの転落物語なのだが、転落後に本作の核があった。
ターは実家で古いビデオを見る。音楽に魅せられた日を思い出し、「時を操り、音を奏でない私は私ではない。生きている意味がない」そんなことを考えたのではないだろうか。
ターを抹殺したのが音楽なら、生かすのも音楽だという帰結。

ケイト・ブランシェットのキャリア最高演技は見応えがあった。
マルケス

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